固定電話網のIP化は、今の電話やFAXの使用に影響はある?

NTT東日本とNTT西日本は、固定電話の通信基盤を支えるアナログ回線(公衆交換電話網:PSTN)をIP網(インターネット技術を利用した通信網)へ切り替える取り組みを2024年1月から進めており、同年12月に全国的な移行が完了しました。これにより、固定電話は従来と同じ使い方のまま、より安定した通信方式で運用されています。

さらにNTTは、老朽化が進むメタル(銅)回線の段階的な廃止も発表しています。2026年度からメタル回線の撤去が始まり、2035年度までに全国でサービスを終了する予定です。今後は光回線や携帯通信網を利用した次世代の固定電話サービスへの移行が進められます。

IP網への移行やメタル回線の廃止により「固定電話は使えなくなるの?」「今の電話機や番号はどうなる?」と不安に思う方もいるかもしれません。しかし、基本的にはこれまで通り利用可能です。

今回は、IP網への切り替えやメタル回線の廃止の背景、今後のスケジュール、利用者が確認しておくべきポイントについて分かりやすく解説します。

背景

固定電話がIP網へと移行する背景と変更点

2024年1月以降、NTT東日本・西日本は、従来のアナログ回線(公衆交換電話網:PSTN)から、インターネット技術を利用した「IP網」への切り替えを実施し、完了しました。これは、固定電話が廃止されるという意味ではなく、通話を支える通信の仕組みがIP技術へ置き換わったことを指します。利用者はこれまでと同じ電話番号・機器を使って通話でき、特別な手続きも不要です。

こうした移行の背景には、固定電話の契約数の大幅な減少があります。1997年には約6,300万件あった契約者数が、現在では約80%減少。さらに設備の維持コストが重く、老朽化も進んだことから、より効率的な通信基盤への転換が求められていました。IP網化されることでより、従来と比べて低コストで安定したサービス提供が可能になります。

IP網移行後は、通信方式のみが変わり、使い方や品質は従来とほぼ同じです。ただし、通話料金は見直され、全国一律3分9.35円(税込)に変更されます。距離に応じて料金が変動する仕組みはなくなり、より公平でシンプルな体系となっています。

さらにNTTは、老朽化が進むメタル(銅)回線の廃止も発表しています。2026年度から段階的に終了を進め、2035年度までに全てのサービスを終了する予定です。代替として、光ファイバーを利用する「光回線電話」や、携帯通信網を活用する「ワイヤレス固定電話」を全国に展開します。どちらも現行料金とほぼ同額で、現在の電話番号をそのまま利用可能です。また、2026年4月からはメタル回線維持費の上昇により、住宅用で月220円、事務用で月330円の基本料金改定が行われます。

このように、固定電話は仕組みを変えながらも継続して利用でき、利用者が急に使えなくなる心配はありません。今後は段階的に次世代回線への移行が進み、通信インフラの更新が本格化していく見通しです。

IP網への移行やメタル回線廃止のスケジュール

固定電話の通信方式は、2024年1月にアナログ回線(公衆交換電話網:PSTN)からIP網へと切り替わりました。これに伴い、NTT東日本・西日本が提供していた一部の関連サービスも順次終了しています。例えば、「INSネット」や「マイライン/マイラインプラス」は既に終了が決定しています。INSネットはEDIやPOS通信などで利用されているため、企業では代替手段への移行が求められます。終了後も2027年頃までは補完措置が続きますが、それ以降は完全終了予定です。また、「114(お話し中調べ)」や「ビル電話」などの一部機能・割引サービスも2024年1月から利用できなくなっています。

さらに今後は、固定電話を支えてきたメタル(銅)回線の段階的な廃止も進められる予定です。NTT東西は2026年度から撤去を開始し、2035年度までに全国でサービスを終了すると発表しています。老朽化が進んだ地域などでは先行して移行が始まり、対象エリアの利用者には個別に案内が届く予定です。移行先としては、光ファイバーを通話専用に利用する「光回線電話」や、携帯通信網を使う「ワイヤレス固定電話」が順次提供されます。これらは従来の電話番号をそのまま引き継げるほか、現在使用している電話機も基本的にそのまま利用できます。

なお、代替サービスへの移行には利用者からの申し込みと工事が必要ですが、2025年10月以降は初期費用が無償化される予定です。

IP網への移行やメタル回線廃止はいずれも通信基盤を次世代化する取り組みであり、突然利用できなくなることはありません。NTTの案内に従って段階的に切り替えることで、安定した固定電話サービスを継続して利用できます。

IP網への移行やメタル回線の廃止で電話機やFAX機の継続利用は可能?

2024年1月に実施された固定電話のIP網への移行では、NTT局内の中継交換機がルーターへ置き換えられただけで、宅内までのメタル回線はそのまま残りました。そのため、利用者側で特別な手続きや工事を行う必要はなく、これまで使用していた電話機やFAX機も引き続き利用できます。

一方、今後予定されているメタル回線の段階的な廃止(2026年度開始〜2035年度完了予定)では、利用者側にも一部対応が求められます。NTTは代替サービスとして「光回線電話」や「ワイヤレス固定電話」を提供予定で、これらに移行する際は利用者からの申し込みと工事が必要です。対象エリアの利用者にはNTTから案内が届くため、そちらを確認しましょう。なお、移行に伴う工事費や契約料は2025年10月以降、原則として無償とされています。

IP網移行・メタル回線廃止後も、現在使用している電話番号はそのまま引き継げるほか、一般的な家庭用・事務用の電話機やFAX機も基本的に継続利用できるとされています。ただし、INSネット専用機器やG4FAXなど一部の旧式機器は非対応となる場合があります。該当する機器を利用している場合は、早めに対応状況を確認しておくと安心です。

このように、IP網移行やメタル回線廃止が進んでも、基本的な電話機やFAXはこれまで通り利用可能です。NTTから届く案内に従って手続きを行えば、スムーズに次世代回線へ移行できます。

電話機やFAX機以外の影響はある?

PSTN回線網のIP化で最も影響を受けると言われているのがNTTのISDNサービスである「INSネット」です。INSネットには2つの通信モードがあります。「通話モード」と「ディジタル通信モード」です。このうち「ディジタル通信モード」が今回のIP回線網移行を受けてサービスの提供が終了しましたが、日本ではこのINS回線を利用している企業が多いと言われています。


企業間の受発注システムで使われているEDI(電子商取引)POSレジやCAT端末(クレジットカード照会端末)警備端末装置、などなど様々なシステムのデータ通信回線としてISDN回線が利用されています。固定電話回線のIP網移行によりこれらのシステムや端末は現状のままでは使えなくなってしまうため、代替手段を構築しない限り業務がストップしてしまい甚大な被害を受けてしまいます。


固定回線網のIP化後でも電話機やFAX機は継続して利用することが可能ということは分かりました。 しかし、それ以外の業務システムや業務端末でINSネットの「ディジタル通信モード」を通信回線として利用している場合は、このままでは利用できなくなることが分かりました。
「メールやインターネットなどのメイン回線は既に光回線に移行済みだが、実は業務システムでISDNを利用していた」、「本社の業務システムは光回線に移行済みだが、支店はまだISDN回線のままだった」といった想定外のケースが発生する恐れがあるため、今のうちから社内の回線インフラでINS回線がないか?また「ディジタル通信モード」を利用している業務システムはないか?について確認しておくことがベターです。
もし利用していたなら早急に代替手段を講じないとなりません。

この機会に既存の固定電話を見直してみては?

固定電話の仕組みや料金体系などが変わることとなりますが、利用者にとってはサービス内容にとくに変更はなく、利便性はほとんど変わりません。

そこでこの機会に、固定電話よりも便利に利用できる「IP電話」や「クラウドPBX」を利用してみてはいかがでしょうか。

クラウドPBXについてはこちらの記事で詳しく解説しておりますので、ぜひご覧ください。
https://03plus.net/enterprise/column/about-cloud-pbx/

まとめ

今回は、固定電話のIP化で既存の電話やFAX、業務への影響があるのかについて解説しました。

NTTの発表により固定電話が廃止されたと勘違いされている方も多いですが、固定電話やFAXそのものは従来と同様に利用できます。ただし、IP網への変更に伴ってINSネットがサービス終了したため、EDIやPOSシステムなどを利用している企業は切り替えが必要となります。
また、IP網への変更に便乗して悪徳業者が増えていますので、騙されないようにお気をつけください。

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