
IVR(自動音声応答システム)は古くからコールセンターなどで活用されてきたシステムです。現在では、クラウド化されて低コストかつスムーズに導入できるようになってきたことから、コールセンターや大企業だけでなく中小企業での導入も増えています。
本記事では、自社でIVRを利用したいものの「どんなIVRを選べば良い?」「選ぶときのポイントは?」という疑問をお持ちの方のために、IVR導入のメリットや選ぶ際のポイント、2023年おすすめのIVRツールをご紹介します。
目次
IVR(自動音声応答システム)とは
IVRとは「Interactive Voice Response」の頭文字を取った略称で、電話の自動応答システムのことです。顧客からの着信に自動で応答し、あらかじめ設定した音声を再生して問い合わせ内容に応じて番号をプッシュしてもらい適切な担当部署・担当者に振り分けを行います。
例えば「商品に関しては1を、サポートは2を」といったような音声を流してヒアリングを行い、問い合わせ内容に応じて自動で対応するシステムとなります。コールセンターや金融機関、大企業など電話応対業務の多い企業にて利用されています。一次応対を自動音声に任せることができるため、業務効率化や人件費削減などを図れるのがメリットです。
IVRを導入するメリット
IVRを導入することで自動音声によって一次対応が行えるようになりますが、これはさまざまなメリットをもたらします。
コールセンターや大企業になると、毎日かかってくる電話が多くなります。その一つ一つに対応し、適切な部署・担当者に振り分けを行うだけでも人手や時間を多く取られてしまうことでしょう。しかしIVRに一次対応を任せることができれば、一次対応・電話振り分けという業務を短縮することができます。自動で対応した後に専門部署・担当者がすぐに対応できるため、電話応対スタッフの数を減らすこともできるでしょう。
IVRの導入は企業側だけでなく顧客側にもメリットとなります。自動音声によって適切に振り分けが行われるため、顧客は自分の用件に合わせてプッシュできます。たらい回しされることなく適切な部署・担当者につながることで、ストレスから解放されることでしょう。結果的にこれは顧客満足度向上にもつながります。
他にも、営業時間外でも自動音声を流すことができ、24時間365日対応できることもメリットです。IVRを活用すれば営業時間や休日のお知らせ、よくある質問への回答、Web問い合わせへの誘導などもでき、顧客からの問い合わせに幅広く対応できる点は大きなメリットと言えるでしょう。
おすすめのIVR活用方法
IVRは自動音声により電話の一次対応を任せることができるシステムです。そのため、電話対応が多い大企業やコールセンターといった業種においてその力を大いに発揮してくれます。
従来であればスタッフが顧客からの問い合わせ内容を伺って、適切な部署・担当者につないでいました。対応数が少なければあまり問題となりませんが、対応数が増えると電話番を多く配置しなければなりません。また、人力による対応スピードや正確性には限界があります。
IVRによる自動対応であれば、顧客自身が自分の問い合わせ内容に合わせてダイヤルをプッシュすることで、自動的に最適な担当者へと繋がります。一次対応を自動化できるため人件費を削減できますし、効率的かつ正確に振り分けを行えるようになるため業務を効率化できることでしょう。
さらに、営業電話や勧誘電話への対応といったケースにもIVRは役立ちます。
特に大企業の場合は毎日多くの営業電話がかかってきます。その対応に貴重な人材が割かれるのは効率が良くありませんし、しつこく営業電話がかかってくる場合は業務に支障をきたす可能性すらあるでしょう。IVRを導入すれば営業電話等の対応も自動音声でカバーできます。しつこく迷惑な営業電話についてはブラックリスト登録でき、着信そのものを拒否することも可能です。
そのほかにも、取引先企業の電話番号をあらかじめ登録しておくことで、IVRを経ずに直接最適な担当者へと繋がるように設定することもできます。
IVRの導入パターン
IVRには従来型であるオンプレミス型や、インターネット回線を使用するクラウド型、さらにはPBXに付随しているケースもあります。それぞれどのような特徴があり、どのようなケースで導入されているのかを解説していきます。
クラウド型かオンプレミス型か
IVRシステムにはオンプレミス型とクラウド型があります。
オンプレミス型はIVRの専用機器をオフィス内に設置するタイプで、アナログ回線によってつながり自動応答を行うものです。オンプレミス型は専用機器の購入や設置工事、回線工事、月額利用料といったさまざまな費用が必要で、実際に導入するには数十万円、場合によっては数百万円かかるケースがあります。機器の保守は自社で行う必要があるなど、費用が多くかかります。
クラウド型は、専用システムをインターネット上のクラウドに設置するものです。オフィス内へ物理的に機器を設置するわけではないため、機器購入費用や工事費用はかかりません。契約から最短で即日~数日程度で利用できるため、スムーズに導入可能です。システムの保守点検はベンダー側が行うため、企業側の手間がかからない点もメリットです。導入ハードルが低く運用もしやすいということで、コールセンターや大企業はもちろん、中小企業での利用も広がっています。
クラウドPBXに付随するIVRを利用するケースも
IVRは、IVR単体のシステムを導入するだけではなく、「クラウドPBX」にIVR機能が搭載されているケースもあります。このケースではPBXシステムを導入すれば、個別に契約することなくIVRシステムを利用可能です。
クラウドPBXは、インターネットを使用してビジネスフォン機能や各種機能を利用できるシステムです。外出中でもスマホを使って外線・内線を活用できます。そのため、担当者が外出中であってもIVRによって振り分けられた着信にすぐ対応できます。わざわざ会社に戻ったり、折り返し電話をしたりする手間がかからないため、スムーズな顧客対応を行えるでしょう。
クラウドPBXは、ビジネスに役立つさまざまな機能を利用できますが、その中にIVR機能が搭載されているケースが多くあり、オプション追加するなどですぐに自動音声応答を活用できるのです。
費用面でもIVRを契約するよりお得感があるため、現在では多くの企業でIVR機能が付帯しているクラウドPBXを導入しています。
IVRの比較ポイント
IVRと一口に言ってもさまざまな形態がありますし、サービスを提供しているベンダーも数多くあります。実際にIVRを導入しようと思っても、どのようにサービスを選べば良いか迷ってしまうことでしょう。
ここではIVRを選ぶ上で、比較するべきポイントについて解説します。
導入形態
IVRシステムは前述の通り、大きく分けて3つの形態があります。
・オフィス内に専用機器を設置するオンプレミス型
・クラウド上にIVRシステムを設置するクラウド型
・PBXの付帯機能として利用できるタイプ
の3つです。
オンプレミス型は専用機器の導入コストが高く、工事期間も必要であるため、実際に利用するまでには時間がかかります。また、月額料金だけでなく保守点検を自社で行う必要があるため、ランニングコストが多くかかってしまう点がデメリットです。
クラウド型は物理的に専用機器を設置する必要がなく、導入コストが低く、すぐに利用できる点がメリットです。保守点検はベンダー側で行うため、労力・コストを削減できます。ただし単体で導入する場合は、自社の電話環境システムとIVRシステム両方を契約して、それぞれ月額料金の支払いが必要となります。
現在多くの企業で導入されているのは、IVR機能が搭載されているクラウドPBXです。クラウド型であるため導入ハードルが低く、IVRの月額料金も数千円程度からとリーズナブルであることがほとんどです。保守点検はクラウド型であるため、ベンダー側で行うので心配はありません。また、IVR機能だけでなく、クラウドPBXに搭載されたさまざまな機能を活用することができ、業務効率化やコスト削減を実現できます。
利用できる機能
IVRはサービスによって搭載されている機能が異なります。また、登録できるメッセージやフローの数もサービスによって違ってくるため、自社に合ったものを選ぶことが大切です。
基本的に、多くの機能が搭載されているIVRであるほど月額料金も高くなります。まずは標準で利用できる機能やオプションで追加できる機能を確認しましょう。その上で自社の業務には何が必要なのかを洗い出し、それに見合ったサービスをお選びください。
費用
オンプレミス型は、専用機器の設置や工事が必要となるため導入コストが多くかかります。保守点検も基本的には自社で行うこととなるため、月額料金以外のランニングコストも頭に入れておかなければいけません。
クラウド型やクラウドPBXは導入コストや保守コストが低く、費用を抑えることができます。ただし、オプションを追加する場合はその料金がかかるため、実際にどのような機能を必要とするかじっくり検討した上で契約することが大切です。
導入によってどのような業務を効率化したいのかを明らかにした上で、ベンダーに見積もりを取るようにしましょう。そうすれば、無駄を省くことができますし導入後のミスマッチを防ぐことができます。
おすすめIVRツール&IVR搭載PBXを比較
IVRツールやIVR搭載PBXは現在多くのベンダーから提供されています。ここでは2023年の最新版として、おすすめの10サービスをご紹介します。
03plus エンタープライズ

03plus エンタープライズは、「東京03」など、全国の主要な市外局番つき電話番号を取得できるクラウドPBXです。番号ポータビリティにも対応しているため、電話環境移行後も既存番号をそのまま使うことができます。月額980円の低コストで、個人事業主でも利用できるリーズナブルさが特徴です。エンタープライズ版は30ID以上の法人向けサービスで、よりリーズナブルにクラウドPBXを利用できます。
外出先でも利用できるビジネスフォン機能を始めとして、さまざまな機能を利用できることはもちろん、IVR機能も搭載しています。顧客からの問い合わせを用件ごとに振り分けて、担当者が外出中であってもスムーズに対応できます。30IDの場合、初期費用は150,000円で、月額費用は21,280円となります。
03plus エンタープライズのIVR機能について、詳しくはこちらをご覧ください。
IVR(自動音声応答)オプションについて|03plus エンタープライズ
VoiceMall
VoiceMallは、NTTテクノクロス株式会社が提供しているクラウド型IVRシステムです。NTTデータセンタを利用し、NTTブランドの大容量・高品質なシステムを利用できる点が特徴です。
IVR機能はもちろん、電話環境の構築・運用を効率化するWebツールと連携できます。
初期費用は規模に合わせて要相談、月額費用は25,000円からとなります。
IVRy
IVRyはクラウド型のIVRシステムです。「050」から始まる電話番号を取得でき、スタートアップ企業にも向いています。Webシステム上で自動応答テキストの作成やフロー設定を行え、業種に合わせてカスタマイズできます。初期費用は0円、月額費用は3,300円からとなります。
トビラフォンcloud
トビラフォンcloudはトラビシステムズが提供するクラウドPBXです。050番号や0120番号などを取得でき、引き継ぎにも対応しています。
スモールスタートから大企業での運用まで対応でき、コストパフォーマンスが高いサービスです。初期費用は33,300円、月額費用は3,300円からとなっています。
BIZTELコールセンター
BIZTELコールセンターはコールセンター業務に特化したクラウドPBXです。
IVR機能はもちろん、顧客管理システムやスタッフ間のチャット、音声認識によるテキスト化、稼働状況のモニタリングなどさまざまな機能を利用できます。
初期費用は200,000円からで、月額費用は81,000円からとなっています。
CT-e1/SaaS
CT-e1/SaaSは、コールセンター業務に特化したクラウド型のCTIシステムです。電話業務を効率化するCTIシステムであり、IVR機能ももちろん搭載されています。
着信順番の管理、優先着信機能、音声だけでは伝わりにくい場合にSMSで対応など、さまざまな機能が搭載されています。
小規模~大規模プランがあり初期費用は300,000円、月額費用は15,000円からとなっています。
LINE AiCall
LINE AiCallは、LINECLOVAが提供する電話応対AIシステムです。
自動応答という意味ではIVRですが、このサービスの特徴は顧客の会話をAIが理解し、要件に応じて応対するという点です。顧客は自動音声を最後まで聞いたり番号を選んだりする必要はなく、AIが回答して担当部署への振り分けを行います。LINEやSMS、クラウドPBXとの連携が可能です。
高度な自動対応を行えますが、自社に適応するシステムは開発に数ヶ月必要で、料金も規模に応じて変動するため問い合わせとなります。
じゃんじゃんコール
じゃんじゃんコールはクラウド型のIVRシステムで、自動音声応答や通話録音などの機能があります。
Webや電話と連動することができ、Web上で複数台の情報管理・共有・蓄積を行えます。キャンペーンや資料請求などを行う際に効果測定をするようなケースで有効に活用できます。
初期費用は30,000円で月額費用は39,800円からとなります。
DriveIVR
DriveIVRは株式会社WizのIVRサービスで、24時間自動応答、コールバック予約、SMSなど複数の機能から自社に必要なものを選んで導入できます。
2週間の無料お試しもあるため、機能をいくつか利用してみて、実際に有用・必要であるかどうかを検討してから契約できます。
初期費用は0円、月額費用は10,000円からとなります。
Smartdesk IVR
Smartdesk IVRは、株式会社WizのIVRサービスで基本的なIVR機能はもちろん、さまざまな機能を利用できます。例えば顧客の音声メッセージをテキスト化して担当部署に送信する機能があり、課題を可視化することで問題解決をスムーズにすることが可能です。
初期費用は49,500円で別途工事費、月額費用は3,300円からとなります。
まとめ
今回はIVRの基礎知識や、最新版のおすすめIVRツールについてご紹介しました。
IVRはオンプレミス型やクラウド型、PBXに付帯するものなどがあります。オンプレミス型は導入コストの高さや工事が必要であるため、現在ではあまり選ばれません。
費用面や導入までのスムーズさ、さまざまなWeb機能との連携などを考えた場合、クラウド型・PBXを選ぶほうが現実的であると言えるでしょう。
本記事を参考に、自社に最適なIVRの導入方法をご検討ください。
