
社会のIT化が進みDX化が推進されている昨今、電話業務を担うPBXもアナログからクラウドタイプに置き換わりつつあります。
そうした中で、「クラウドPBXは良いと聞くけど、他の企業も導入しているのか気になる」という企業の担当者も少なくないのではないでしょうか。
今回はクラウドPBXの市場シェアや今後の動向、クラウドPBXのシェアが拡大している理由を解説し、おすすめのクラウドPBXをご紹介します。
目次
クラウドPBXとは
クラウドPBXは従来のPBXと異なり、クラウド上にシステムを構築してインターネット回線を使用し、ビジネスフォン機能を利用できるようにしたサービスです。
主装置の購入や設置工事が必要ないため、コストや手間をかけずにスムーズに導入できることが大きな特徴です。また、通話料金は全国一律であり、従来のPBXにはないインターネットを利用したさまざまな機能を利用できる点がメリットとなります。
クラウドPBXの市場シェアは?
クラウドPBXはまだ新しいサービスで、従来のPBXを現役で利用している企業も少なくありません。そんな日本において、クラウドPBXの市場シェアはどのような状況なのかを解説します。
クラウドPBX導入状況
クラウドPBXは比較的新しいサービスであるため、詳細を調査したデータはあまり存在していません。そのため、導入状況を調査したデータも2012年のものが最新となります。
アメリカの調査機関であるParallels社がまとめたデータ「増益を目指すフルサービスプロバイダのための手引き※」によれば、日本国内におけるクラウドPBXのシェア率はわずか1%ほどだったとされています。当時はまだクラウドPBXは新しいサービスで認知度が低く、アナログ回線の従来型PBXが主流であったことが理由だと推測されます。
同データでは企業規模ごとに以下のような普及率であったと示されています。
・マイクロSMB(従業員1~9名)→シェア率0%・小規模SMB(従業員10~49名)→シェア率3%・大規模SMB(従業員50~250名)→シェア率13% |
つまり、個人事業主や少人数の規模ではクラウドPBXはまったく普及しておらず、規模が拡大するほど導入されている傾向にあったわけです。これは、企業規模が小さいほどサービスが認知されておらず、導入すべきかどうか判断する情報が足りなかったことが要因にあると考えられます。逆に規模が大きいほど認知されており、その利便性も理解されていたことで普及していたのでしょう。
ICTやクラウドツールの導入状況
前述の通り、クラウドPBXのみに焦点を当てた調査データは古いものしかありません。そこでここでは「ICT」や「クラウドツール」の導入状況から、近年のクラウドPBXの普及状況を推測していきます。
ICTとはコミュニケーションに特化した情報技術のことです。ICTの中にはクラウドPBXも含まれるため、ICTの導入状況が分かればクラウドPBXの普及状況を推測することができます。
総務省が2018年発表した「H30年版 情報白書※1」によれば、調査対象となった日本の企業500社中70.2%がICTを導入していることが分かっています。もちろん全てがクラウドPBXとは限りませんが、2012年の調査結果からすれば、大きな躍進をしていると考えられると言ってよいでしょう。
また、日本以外の先進国ではICTの導入率がアメリカ(80.8%)、イギリス(94.4%)、ドイツ(93.8%)と圧倒的に高くなっています。このことから、日本はまだまだ伸びしろがある状態であると言えるのではないでしょうか。
さらに、2021年に総務省が発表した「令和2年通信利用動向調査の結果※2」によれば、2020年時点でクラウドサービスを利用している企業が68.7%であると示されています。このデータは全てのクラウドサービスの集計値ですが、間接的にクラウドPBXの普及率も高まっていると推測できます。
海外のクラウドPBX市場シェアの状況
前述の通り、先進国ではICT導入率が日本よりも10~20%ほど高くなっていて、クラウドPBXの普及率も高いことが推測できます。なぜ諸外国ではクラウドPBXの普及率が高いのか、その理由は「UCサービス」の台頭や地理的要因が関係しています。
海外のクラウドPBXは電話のみならず、メールやチャットなどのコミュニケーションツール=UC機能がほぼ必ず追加されています。一つにまとまっていて利便性が高いことで、使用する企業が多いのです。
また、島国である日本と違い、北米やヨーロッパは他国と隣接しているため、グローバルなビジネス感覚が求められています。そのため世界のどこでもインターネット環境さえあれば利用できるクラウドPBXは重宝されやすいのです。このような理由により、海外のクラウドPBXはシェア率が高いと考えられます。
クラウドPBX市場シェアの今後の動向は?
クラウドPBXは従来のPBXに取って代わるサービスとなるのでしょうか。今後のクラウドPBXの市場シェア動向について解説します。
従来型のPBXは需要が減少傾向にある
従来型のPBXはオフィス内に主装置を設置し、アナログ回線を使用してビジネスフォン機能を利用します。主装置のメンテナンスや管理にはコストがかかりますし、専用の電話機が必要であるためリース費用も必要です。つまり、従来型のPBXはランニングコストがかかり、管理にも手間がかかるツールであると言えます。
一方でクラウドPBXはシステムの管理をベンダーが行うため、メンテナンスの手間がかかりません。端末も既存のパソコンやスタッフのスマホを流用できるため、機器購入やリースコストはかかりません。
そのようなメリットがあることから、クラウドPBXへの乗り換えが進み、従来型PBXの需要は減少傾向にあると推測されています。
一般社団法人情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)の「通信機器中期需要予測[2021-2026年度]※」でも、2026年度のビジネス関連機器の需要総額は2020年度比で18.9%減と予想しています。中でも従来型のPBXは、代替サービスとなるクラウドPBXへの導入により減少傾向にあることが要因にあるとのことです。
今後さらにシェアを拡大するとみられている
さまざまなデータから、クラウドPBXへの普及状況や従来型PBXの需要予想などをご紹介しましたが、ここから分かることは、クラウドPBXは日本において今後シェアを大幅に拡大する可能性が高いということです。
日本は諸外国と比べてICTの導入率が低く伸びしろがあります。また、クラウドPBXの普及率も、中小企業以下ではまだまだそれほど多くありません。それでいて、CIAJの予測からも分かるように、従来型のPBXからクラウドPBXへの乗り換えが進んでいる状況です。つまり、将来的には企業で利用するビジネスフォンはインターネット回線を使用するクラウドPBXが当たり前、そんな時代が来る可能性が高いと言えるのではないでしょうか。
なぜクラウドPBXのシェアが伸びているのか?
これまで解説してきたように、クラウドPBXのシェアは近年伸びてきています。そして今後もさらにシェアを拡大していくことでしょう。なぜクラウドPBXが注目されているのか、その理由をご紹介します。
PCやスマホがビジネスフォンになる
クラウドPBXは、固定電話機以外もビジネスフォンとして利用できる点がシェアを伸ばしている一つの理由になっています。
従来のPBXは主装置に合わせた専用の電話機でなければ、ビジネスフォンとして利用できませんでした。しかしクラウドPBXは、PCやスマホ・タブレットなど、インターネット回線を使用できる端末であればビジネスフォンとして利用することができます。
また、近年はテレワークの推進に伴い、社員のプライベート用PCやスマホを業務利用するBYODも広がりつつあります。企業としては新たな端末を購入する手間や費用をかけずに済みますし、社員としては使い慣れた端末をそのまま利用できることがBYODのメリットです。
このようなことから、さまざまな端末を利用できることはクラウドPBXのシェアを拡大する大きな要因となっています。
テレワークに対応できる
さまざまな端末を利用でき、インターネット回線があればいつでもどこでもビジネスフォンとして利用できるクラウドPBXはテレワークとの相性が抜群です。
働き方改革や2020年からのコロナウイルス拡大を背景に、テレワークを推進する企業が増えています。しかし、テレワークは普及し始めたとはいえ手探り状態の部分も多く、課題を抱えている企業は少なくありません。
そこで活躍するのがクラウドPBXです。アプリが導入された端末さえあれば、いつでもどこでも会社代表番号で発着信できるため、自宅にいても電話業務を行えます。また、社員の通話状況を把握できる機能や、顧客の連絡先をクラウド上で共有できる機能があるため、場所を問わずに業務を進めることができるのです。
テレワークとの相性の良さはクラウドPBX普及の大きな要因となっていると考えられます。
導入・運用にかかるコストが安い
従来のPBXは主装置の設置・購入や配線工事が必要で、導入には多大なコストが必要でした。しかし、クラウドPBXはクラウド上にシステムを構築するため工事は不要ですし、装置の購入費用もかかりません。導入コストは従来のPBXと比べ物にならないほどリーズナブルです。
また、主装置のメンテナンスや故障時の修理・交換費用もかかりません。運用コストは毎月の月額料金のみであり、リーズナブルに抑えることが可能です。
さらに、クラウドPBXはインターネット回線を使用するため通話料金も全国一律です。遠距離通話が多い企業の場合は大幅にコストダウンを見込めることでしょう。
導入がスピーディー
従来のPBXは申し込み後に工事予約が必要で、場合によっては1ヶ月以上待たされることもありました。しかしクラウドPBXは工事不要で、ベンダーにもよりますが、申し込み・契約から最短で1~2日程度で導入することができます。
また、従来のPBXのように追加のたびに配線工事をする必要がありません。Webなどで契約台数を増やせば、スマホにアプリを導入するだけで、即座に新たな端末を追加できます。もちろん、退職や異動がある場合は契約台数を減らせば無駄なコストを抑えられます。
導入や契約台数の増減をスムーズに行えることは、クラウドPBX普及の要因の一つと言えるでしょう。
多彩なオプションが利用できる
従来のPBXはアナログ回線を使用したビジネスフォンであり、通常の電話機能しか利用できませんでした。
しかしクラウドPBXは外線・内線・転送といった電話機能だけではありません。ベンダーにもよりますがチャット、Web会議、勤怠管理、クラウドFAX、Web電話帳など、ビジネスに役立つさまざまな機能・オプションを利用できます。
こうした機能を活用すれば、企業が抱えている課題を解決することができ、業務効率化やコスト削減などを実現できることでしょう。
人気のクラウドPBXサービス3選を紹介
クラウドPBXはこれから普及が加速するサービスです。そのためサービスを提供するベンダーも数多く存在しています。ここではその中でも人気の高いクラウドPBXを3つご紹介します。
03plus

「03plus」は「東京03」や「大阪06」をはじめ、主要46局の市外局番つき電話番号を取得できるクラウドPBXサービスです。番号ポータビリティにも対応しているため、既存の電話番号を引き継いだまま従来のPBXから移行する場合も利用可能です。
また、ビジネスに役立つオプション機能も多く、例えば「クラウドFAX」は大阪市での導入実績があります。クラウド上でFAXの送受信をできる機能で、大阪市では導入後に7割のコスト削減とペーパーレス化を実現しました。他にも通話コストを下げる「10分かけ放題」や顧客の連絡先をクラウド上で一元管理できる「WEB電話帳」なども利用できます。
ひかりクラウドPBX
「ひかりクラウドPBX」はNTTが提供するクラウドPBXです。NTT東日本がICT環境のサポート・管理を行う「まるらくオフィスサービス」に対応していて、知識のある人材が自社にいなくてもスムーズにクラウドPBXの導入・利用をすることができます。クラウドPBXへの移行に不安がある場合や、管理などの手間を省きたい企業に向いています。
BIZTELモバイル
「BIZTELモバイル」は株式会社リンクのクラウドPBXサービスです。スマホ等の携帯電話端末を内線化することができ、docomo/auのスマホ・ガラホ・ガラケーを使えるキャリアFMCタイプと、キャリアを問わないアプリFMCタイプがあります。社員のスマホを活用したBYODを推進したい企業に向いています。
月額料金は、内線番号数200番号のライトプランで30,000円です。
まとめ
今回はクラウドPBXの市場動向と今後の予測を解説しました。
クラウドPBXは比較的新しいサービスです。導入コストや手間がかからず、クラウドを活用したビジネスに役立つさまざまな機能を利用できるため、導入すれば業務効率アップやコスト削減の実現も可能です。まだまだ従来のPBXを使用している企業も多く存在していますが、今後は乗り換えが進むと予測されていて、普及率はまだまだ伸びしろがあるサービスです。
「どのクラウドPBXにすべきか迷う」という方は、1IDから気軽に契約できてビジネスに役立つ機能が豊富な「03plus」がおすすめです。ぜひご検討ください。