顧客からさまざまな問い合わせが寄せられ、その対応で困っている企業は多いのではないでしょうか。「オペレーターの人件費を削減したい」「スムーズに担当部署につなぎたい」とお望みなら、ぜひIVRを活用しましょう。
今回は、IVRとコールフローの概要、コールフローの設計手順や流れ、設計時のポイントを解説します。
目次
IVR活用のポイント「コールフロー」とは
企業でIVRを活用する場合、最も重要になるのが「コールフロー」です。コールフローとは何なのか、そのメリット・デメリットもあわせて解説します。
コールフローとは
コールフローとは、顧客からの電話内容に応じて、適切な担当者に振り分けるためのフロー(流れ・工程)のことです。IVRを活用する場合、顧客が迷わず担当者までたどり着けるように、コールフローを作成しなければなりません。
一般的には、「ご契約の方は1を、修理の方は2を、その他は3を押してください」のように自動音声ガイダンスを設定します。それぞれの番号の先、例えば1番の先には契約の案内に特化したオペレーターが配置されます。また、担当オペレーターが通話中の場合や営業時間外の案内についてもコールフローにて決めておくことが可能です。
企業にかかってくる問い合わせの内容はさまざまで、例えば携帯電話会社であれば契約・解約・料金・修理など、顧客は幅広い悩みを質問したいと考えています。そのため、オペレーターも各問い合わせに対して深い知識を持っている方が、課題解決をしやすくなります。
「早く課題を解決したい」という顧客の気持ちと、「効率良く対応したい」という企業側の課題のいずれも解決するためにも、適切に着信を振り分けるコールフローがとても重要であるといえます。
コールフロー設定のメリット
コールフローを設定するメリットはさまざまありますが、大きく「顧客側のメリット」「企業側のメリット」の2つに分類できます。それぞれどのようなメリットがあるのか、以下で解説していきます。
顧客側のメリット
コールフローが適切に設定されることの顧客側の大きなメリット、それは問い合わせ解決までの時間を短縮できることです。以下でさらに細かいメリットについて見ていきましょう。
・適切なオペレーターにつながる
顧客はプッシュボタンで自分の課題や悩みに合った番号を選択するだけで、解決に最適なスキルを持つオペレーターにつながることができます。一次対応者に事情を説明してオペレーターを探してもらうような手間がかからず、顧客はストレスを感じません。
・効率よく対応してもらえる
IVRシステムによって、接続されるオペレーターには顧客がどんなことで悩んでいるのかが伝わります。さらに、頻出の問い合わせに対する回答を準備しておけば、各オペレーターはそれを参照しながらスムーズに回答できます。オペレーターとの少ないやり取り、時間で問題解決できることで、顧客は満足度を高めます。
・一次解決率が高い
IVRシステムによって選択した問い合わせ内容に応じて適切なオペレーターにつながるため、一度の対応で顧客の悩みを解決しやすくなります。顧客側はたらい回しにされることなく問題解決できるため、満足感を得やすいです。
企業側のメリット
企業側にとってのIVR活用のメリットは、「オペレーターの負担軽減と生産性向上」そして「リソースの最適配置によるコスト削減」です。
まずは「オペレーターの負担軽減と生産性向上」に関するメリットを見ていきましょう。
・無駄な転送がなくなる
IVRによって適切に振り分けられるため、顧客から話を聞いて何度も転送し直す必要がなくなります。これは、オペレーターの時間節約につながります。
・自分の得意分野を活かせる
オペレーターは、自分の得意な分野や専門性を持つ問い合わせにのみ集中して答えられるようになります。苦手分野を担当することがなくなれば、精神的負担も軽減できます。
・準備時間を確保できる
IVRシステムによって顧客の悩みを分類し、情報を収集できます。そのため、オペレーターは顧客に合った対応をするための準備ができて効率の良い対応を行えます。
・一次対応がなくなる
顧客からの着信にまずはIVRで対応します。オペレーターが一次対応する手間がなくなるため、負担を大きく軽減できます。
続いて、「リソースの最適配置によるコスト削減」を見ていきましょう。
・効率的な配置の実現
問い合わせ内容ごとに振り分けできるため、オペレーターのスキルや専門性に合わせた配置を行えます。過剰配置を避けられて人件費削減につながります。
・トレーニングの最適化
オペレーターのスキルや専門性を活かす配置になるため、育成・研修もそれを伸ばすことに特化できます。無駄なトレーニングによるコスト浪費がなくなります。
・効果的なデータ分析
IVRのコールフローから得られるデータを分析することで、人員配置やオペレーターのスキル調整などの最適化を継続できます。
・自動化による人件費削減
一次対応や簡単な問い合わせはIVRに任せることができるため、人件費を抑えやすくなります。
コールフロー設定の注意点は「離脱」
コールフローを設定することが、顧客の離脱につながる可能性がある点は注意が必要です。
IVRを導入すれば、顧客はプッシュ操作のみで簡単に担当者とつながることができます。しかし、コールフロー設定が複雑になってしまったり、プッシュ操作が多い設定になっていたりする場合、担当者につながるまでに多く時間がかかります。また、混乱や操作間違いにもつながります。そのようなコールフロー設定は顧客にとって「使いにくい」ものであるといえます。その結果、ガイダンス操作の途中で離脱してしまう可能性が高まるのです。
このような経験をユーザーに何度もさせてしまうと、「あの企業は対応が悪い」「問い合わせするのが嫌だ」といったように、企業そのものにマイナスイメージを抱くようになります。それは、顧客離れを引き起こすきっかけとなることでしょう。コールフローを設定する際は、分かりやすく最小限に留めることが大切です。
コールフローで必要となる2つのシステム
コールフローを設定するうえで必要となるのは「IVR」「ACD」と呼ばれる2つのシステムです。それぞれについて簡単に解説していきます。
IVR
IVRとは、音声自動応答システムのことです。顧客からの着信を受け、自動音声でガイダンスを流します。さらに、顧客が問い合わせ内容に応じてプッシュボタンを押すことで着信を振り分けます。例えば、「◯◯の方は1を、◯◯の方は2を、その他のお問い合わせは3を押してください」のようにガイダンスを流して振り分けます。
一次対応を任せられるのはもちろん、コールフローによって定型的な問い合わせに対して回答することも可能です。また、自動音声なので営業時間に関係なく24時間いつでも電話対応できるのも特長です。
ACD
ACDとは、あらかじめ設定したルールに基づいて顧客からの着信を振り分けるシステムのことです。Automatic Call Distributionの略で、日本語では着信呼自動分配装置と呼ばれます。
ACDには以下のようなさまざまな機能があります。
・待ち時間ガイダンス:回線が混み合っている際に流すアナウンスです。
・スキルベースルーティング:顧客が入力した情報に基づき振り分ける機能です。
・ランダムルーティング:手が空いているオペレーターにランダムで振り分ける機能です。
・オペレーターステータス:オペレーターのステータスに応じて優先割り振りなどを行う機能です。
・オーバーフロー転送:架電が多く対応できるオペレーターが不足した状態の場合、社内の適切な人材・部署へと転送する機能です。
IVRとACDの連携による利点
IVRとACDは顧客からの着信をオペレーターに振り分けるという点では似ています。しかし、IVRは顧客のプッシュボタン操作による振り分け、ACDは企業側で決めたルールに基づいた振り分けを行います。このようにそれぞれで振り分けルールが異なることから、組み合わせることでより柔軟かつスムーズな着信の振り分けを行えます。
例えば、IVRで顧客を振り分けてもその先のオペレーターが対応中であれば、顧客を待たせてしまいます。しかしACDと組み合わせておけば、ランダムルーティング機能により手が空いているオペレーターに振り分けて速やかな対応をすることが可能になります。
IVRを用いたコールフロー設計の手順・方法
コールフローは、適切に設計できれば業務効率アップや顧客満足度向上を実現できます。以下で、IVRを用いたコールフロー設計の手順や方法について解説します。
業務に関わる部署を整理する
コールフローを設計するためには、まず業務に関わる部署の整理を行います。
例えば電話業務がメインのコールセンターの場合、顧客からの電話に直接対応するオペレーターや、電話業務の管理を行うスーパーバイザー(SV)などがいます。これらのスタッフが現在どれくらいの人数がいるのか、過不足はないか、それぞれのスキルはどの程度なのかを整理します。そして必要に応じ、IVR導入を踏まえた上で採用や異動といった人事を検討します。
また、電話業務に直接関わるオペレーターなどだけでなく、営業部・開発部・広報部などの部署との連携を確認しましょう。IVRを導入することで、オペレーターはその専門性を高めなくてはいけません。自社商品やサービスについてのより詳細な情報共有、必要に応じた社内研修、キャンペーンごとの特記事項の確認などで、各部署の連携は必須となります。他にも、ヘルプデスクや発送・修理担当部署などとの連携を深め、より適切なコールフロー設計するのに必要な下地を整えていきます。
作業内容を洗い出す
次に作業内容を洗い出していきましょう。
コールフローは、業務内容はもちろんその一連の流れを想定した上で設計することが重要です。流れに沿っていなければ、どんなにつくり込んでもそのコールフローは実際の業務に役立てられないためです。例えば、誰がどのような対応をするのか、顧客情報はどのように入力するのか、電話対応後の処理はどうすべきかなど、それぞれの段階で詳細をまとめていきましょう。
また、企業によって問い合わせ内容は異なりますし、キャンペーンなど特別なケースもあります。作業内容を細かく洗い出し、それぞれを見直した上で、さまざまなケースでも柔軟に対応できるようにコールフローを設計していきましょう。
作業を時系列に並べる
続いて、洗い出した作業内容を時系列で並べていきます。これは、コールフローの骨子にもなりますので、抜け・漏れなく正確に行うことが大切です。
例えばコールセンターの場合、顧客は幅広い悩みを抱えていて問い合わせ内容もさまざまです。そのため、実際の電話対応では多くの分岐が発生します。自社の商品やサービスに関する問い合わせであったとしても、「新規契約」「修理依頼」ではまったく異なります。この場合は、それぞれに合った担当者への振り分けを行うためにも「契約」「修理」のフローを作成する必要があるわけです。
このように、作業を時系列に並べていってどこに分岐点があるのかを必ず確認しましょう。
コールフロー図を作成する
時系列に並べることができたら、コールフロー図を作成します。
コールフロー図を作成する場合、上から下へ向かって流れで作成していくのが見やすいこともあって一般的です。分岐ポイントでは「数字」「はい・いいえ」などの選択肢を設け、その下に分岐ごとのフローを作成します。
ここで作成するコールフロー図はあくまでも下書きのようなものです。とはいえ、この後に見直しをしてブラッシュアップ後、作成したコールフロー図に沿ってIVRの設定を行います。そのため、なるべく見やすく分かりやすく作成することを心がけましょう。
全体の流れを整理する
コールフロー図が作成できましたら、見直しをしてブラッシュアップします。
詳しくは後述しますが、コールフローはあまりに細かくしすぎたり、階層を深くしすぎたりすると顧客満足度低下や離脱につながります。また、電話対応にロスがでて業務を思うように効率化できないこともあります。そのため、できる限り簡潔にまとめることが大切です。不要な部分、冗長な部分があれば問題ない範囲で削っていきましょう。
もちろん、足りない部分があれば追加も必要です。社内で問い合わせのロールプレイを行うなどして、コールフロー図に過不足がないかじっくり確認していきましょう。
コールフローの作成例(ECサイトの例)
ECサイトのコールセンターにおける、コールフローの作成例を記載していきます。
顧客からの入電を受けて音声ガイダンスにて以下のようなテキストを読み上げ、1~4の番号を選択してもらう ↓ 「商品のご注文は1を、配送状況の確認は2を、ご注文のキャンセルは3を、その他のお問い合わせは4を押してください」 ↓ 「1」を選択した場合は、注文担当のオペレーターまたはIVRの自動注文受付へつなぐ 「2」を選択した場合は、配送担当オペレーターへつなぐ。営業時間外であれば配送担当のIVRへつなぐ 「3」キャンセル担当のオペレーターへつなぐ。営業時間外であればキャンセル担当のIVRへつなぐ 「4」さまざまな問い合わせに対応できる能力や経験値の高いオペレーターへつなぐ |
コールフロー設計のポイント
自社に合ったコールフローを作成できれば、電話業務の効率化や顧客満足度向上を実現できます。ここでは、より良いコールフローを設計するために、覚えておきたいポイントを解説します。
階層や選択肢を少なくする
コールフローを設計する際には、階層や選択肢をできる限り少なくすることが大切です。階層が深い、選択肢が多いようなコールフローは顧客にとってストレスになるためです。
例えば階層が深すぎる場合、顧客は何度もプッシュ操作しなければならず担当者につながるまでに時間がかかりすぎます。そのため、顧客はストレスを溜めてしまい途中離脱につながります。選択肢が多すぎる場合、オペレーターのグループが細分化されすぎてしまい、顧客の問い合わせ内容と違ったオペレーターにつながってしまうことがあります。そうしたミスマッチは、顧客にとっては大きなストレスです。また、どのような選択肢があるのか聞かなければならないため、時間がかかってしまうのも課題といえます。
コールフローは「3階層」「3つの選択肢」くらいが良いといわれています。企業の業務内容にもよりますが、これくらいであれば顧客もストレスを感じにくいためです。もちろん、業務内容によってはもう少し階層や選択肢を増やしたほうが良い場合もあるでしょう。自社の業務に合わせ、バランスを調整していきましょう。
セリフは短く分かりやすくする
音声ガイダンスのセリフは短く分かりやすくすることを心がけましょう。
顧客にとって、問い合わせの電話をすることはそれだけでストレスになります。さらに、長く分かりにくい音声ガイダンスが流れれば、顧客はさらにストレスを感じてしまうことでしょう。顧客は「なるべく早く担当者に相談したい」と思っています。その気持ちを尊重するのであれば、セリフは短く分かりやすくするのが自然な流れです。
また、セリフが長く分かりにくい場合、顧客を困惑させることもありえます。その結果、異なるオペレーターとつながってしまい、たらい回しになることもあるでしょう。そうしたトラブルも、顧客の不満を高めることにつながります。
「その他の問い合わせ」を用意する
コールフローを設計する際には「その他の問い合わせ」をうまく活用しましょう。
これまで何度もお伝えしてきたように、顧客の問い合わせ内容は多岐にわたります。そのため、用意した選択肢では解決できないこともあるでしょう。また、「自分の悩みがこの選択肢に合っているか分からない」という顧客もいます。「その他の問い合わせ」はそうした顧客を救済できる選択肢です。
また、「その他の問い合わせ」を活用すれば、階層や選択肢を少なくすることも可能です。よくある問い合わせについては選択肢を設け、それ以外については「その他」とすれば、階層や選択肢を増やす必要がなくなります。
IVRを活用するなら03plus
IVRを活用するならば、クラウドPBXの03plusがおすすめです。
03plusは全国主要46局の市外局番付き電話番号を取得できて、スマホで発着信できるクラウドPBXサービスです。個人事業主や中小企業はもちろん、大手企業や官公庁でも利用されています。
03plusでは、電話業務を効率化するIVR機能も1番号あたり3,800円からとリーズナブルに利用できます。振り分けされた着信はスマホ、PCなどで受けられますので、外出先やご自宅であっても電話対応が可能です。時間外アナウンスと組み合わせれば、営業時間外のアナウンスも設定できます。
IVRの導入をご検討なら、ぜひ03plusをお選びください。
まとめ
今回は、IVRの活用に重要なコールフローについて解説しました。
IVRは電話の一次対応を自動音声ガイダンスで行えるため、業務効率化や人件費削減などにつながる便利な機能です。しかし、コールフローが適切に設計されていないと、顧客満足度の低下を招く恐れがあります。本記事を参考に、自社に合ったコールフローを設計して、電話業務を効率化していきましょう。