IVR(自動音声応答システム)は古くからコールセンターなどで活用されてきたシステムです。現在では、クラウド化されて低コストかつスムーズに導入できるようになってきたことから、コールセンターや大企業だけでなく中小企業での導入も増えています。
本記事では、自社でIVRを利用したいものの「どんなIVRを選べば良い?」「選ぶときのポイントは?」という疑問をお持ちの方のために、IVR導入のメリットや選ぶ際のポイント、2024年おすすめのIVRツールをご紹介します。
目次
IVR(自動音声応答システム)とは
IVRとは「Interactive Voice Response」の頭文字を取った略称で、電話の自動応答システムのことです。顧客からの着信に自動で応答し、あらかじめ設定した音声を再生して問い合わせ内容に応じて番号をプッシュしてもらい適切な担当部署・担当者に振り分けを行います。
例えば「商品に関しては1を、サポートは2を」といったような音声を流してヒアリングを行い、問い合わせ内容に応じて自動で対応するシステムとなります。コールセンターや金融機関、大企業など電話応対業務の多い企業にて利用されています。一次応対を自動音声に任せることができるため、業務効率化や人件費削減などを図れるのがメリットです。
IVRの主な機能
ツールによって細かな違いはありますが、IVRにはおもに以下のような機能が搭載されています。
- 顧客の用件を確認し、選択肢で選んでもらう
- 顧客の用件ごとに、対応先を振り分ける
- 折り返し電話の予約(コールバック機能)
- 営業時間外などの音声アナウンス
- 着信の自動振り分け
これらの機能を利用することで、電話受付の一次対応にかかっていた手間を削減することが可能になります。また、このほか電話対応をより便利にする機能として、
- 通話録音機能
- 外部の顧客管理システムなどとの連携
などが利用できるツールもあります。
IVRの機能についてはこちらの記事でも詳しく紹介しておりますので、ぜひご覧ください。
IVRからの発信が可能なものもある
IVRは着信での活用だけでなく、発信での活用も可能です。
例えばリストにある顧客の電話番号に自動で発信し、音声での案内を再生することが可能です。
キャンペーンや新商品の告知のほか、自動音声でのアンケートなど、さまざまな用途で活用することができます。
ただし、ツールによって着信対応のみできるものと、発信での利用ができるものがあるため、目的に応じたツール選びが必要です。
おすすめIVRツール&IVR搭載PBXを比較
IVRサービスやIVR機能を利用できるクラウドPBXは、現在さまざまなベンダーから提供されています。こちらでは、2024年の最新版としておすすめの9つのサービスを紹介します。
※以下の内容は記事執筆時の情報をもとに記載しております。最新の情報は各社公式サイトをご覧ください。
03plus エンタープライズ
03plus エンタープライズは、全国の主要46局の市外局番付き電話番号を取得して、スマホやPCなどの端末から発着信できるクラウドPBXです。番号ポータビリティにも対応し、電話環境を移行する際も既存番号をそのまま活用することが可能です。
ユーザー数は8万を突破し、大阪市でも導入されています。1IDあたり1,280円の低コストで利用できるため、個人事業主でも気軽に利用できます。エンタープライズ版は30ID以上の法人向けサービスであり、クラウドPBXの導入を検討している中小企業から大企業まで幅広く対応できます。
外出先でも会社番号で発着信でき、他にもさまざまな機能が豊富に備わっています。クラウド上でFAXの送受信を行えるクラウドFAX、電話の一次対応を任せられる留守レポ、音声で自動案内できるIVRなどが代表的なものです。IVRについては、3階層まで設定できるようにアップデートされる予定のため、小規模コールセンターでも活用できます。
30IDで法人利用する場合、初期費用は150,000円、月額費用は27,380円です。
03plus エンタープライズのIVR機能について、詳しくはこちらをご覧ください。
IVR(自動音声応答)オプションについて|03plus エンタープライズ
VoiceMall
VoiceMallは、NTTテクノクロス株式会社がサービスを提供している、クラウド型のIVRシステムです。高セキュリティのNTTデータセンターを利用しているため、大容量かつ高品質なシステムを利用できます。クラウド型であるため、既存のWebシステムとの連携を容易に行えるのも特徴です。自社の業務内容に合わせて、構築・運用を効率的に行えるように、各種Webツールも用意されています。
費用については要相談ですが、例えば着信型のベストエフォートタイプの場合、初期費用300,000円から、月額費用260,000円からが目安とされています。
IVRy
IVRyは株式会社IVRyが提供している、クラウド型のIVRシステムです。Web上でIVRの自動応答テキストの作成やフロー設定を簡単に行えます。他にも、顧客管理や受電履歴・メモの作成・共有、留守電機能による音声録音なども可能です。また、「050」から始まる電話番号を取得できますので、スタートアップ企業の導入にも向いています。
料金はスタータープランで初期費用0円、月額費用2,980円からとなっています。「050」番号取得の場合は、番号維持費に月額500円必要です。
トビラフォンcloud
トビラフォンcloudは、トラビシステムズが提供しているクラウドPBXサービスです。050や0120、市外局番付き電話番号などを取得して通話できます。番号ポータビリティにも対応しているので、電話環境を移行したいケースでも活用できるでしょう。
IVR機能はもちろん、コールキューイングや通話録音、自動テキスト化、ラベリングなどさまざまな機能を利用できます。スモールスタートから大企業の運用まで対応できるのが魅力です。
基本セット料金は、初期費用が33,000円、月額3,300円です。市外局番を取得する場合は、初回1番号が7,700円、初期工事費用に55,000円必要となります。
BIZTELコールセンター
BIZTELコールセンターは、株式会社リンクとブライシス株式会社が共同事業として運営しているクラウドPBXです。名前の通り、コールセンター業務に特化した機能が豊富に揃っています。IVR機能だけでなく、顧客管理システム、稼働状況モニタリング、スタッフ間のチャット、通話内容のテキスト化などを利用できます。
料金はライトプランで初期費用200,000円、月額利用料は81,000円となっています。
CT-e1/SaaS
CT-e1/SaaSは、コムデザインが提供するコールセンター業務に特化した機能を取り揃えたクラウド型CTIシステムです。業種や業態を問わず31,000シート、1,745テナントの採用実績があります。
IVRはもちろん、着信呼分配(ACD)、通話録音、通話モニター、スケジュール管理、SMS対応、優先着信設定などの機能を利用できます。
料金は初期費用300,000円、月額費用は回線ライセンス5,000円、シートライセンス5,000円、管理機能ライセンス5,000円からとなっています。
LINE AiCall
LINE AiCallは、LINE WORKS株式会社が提供している電話対応AIシステムサービスです。
電話対応AIとIVRはどちらも自動応答により顧客対応するため、似ていると思われがちです。しかし両者には大きな違いがあります。電話対応AIは音声認識、音声合成、会話制御を組み合わせて人間により近い自然な対話を自動で行います。あらかじめ設定したシナリオやルールに沿って応答するボイスボットとは異なり、AIが顧客の会話を理解して、柔軟に用件に対応できるのが特徴です。また、LINE AiCall ではLINEやSMS、クラウドPBXとも連携できるため、幅広い運用が可能です。
IVRよりも高度な自動応答を行えますが、システム開発には数ヶ月を要します。料金も業務内容や企業規模によって異なりますので、要相談となっています。
じゃんじゃんコール
じゃんじゃんコールは株式会社メテムが提供しているクラウド型のIVRシステムです。
IVRはもちろん、通話録音もできます。また、電話・Web連動ができ、それぞれで登録した情報をデータ蓄積して情報管理・共有を行えます。キャンペーンを行う際の効果測定に活用できる便利な機能もあります。
料金は、初期費用が30,000円、基本構成の月額費用は14,800円となっています。
Smartdesk W
Smartdesk Wは株式会社Wizが提供しているサービスです。IVR機能が搭載されていることはもちろん、SMS送信やボイスレター機能、時間帯着信やIVRルートの内訳レポート作成などの機能があります。また、有人オペレーターが常時複数名体制で電話対応を代行するサービスもあり、企業における電話業務の負担を軽減してくれます。
料金は受電件数毎月50件まで対応できるミニマムプランで初期費用無料、月額料金8,800円となっています。
IVRを導入するメリット
IVRを導入することで自動音声によって一次対応が行えるようになりますが、これはさまざまなメリットをもたらします。
企業側のメリット
・電話取次業務の負担軽減
コールセンターや大企業になると、毎日かかってくる電話が多くなります。その一つ一つに対応し、適切な部署・担当者に振り分けを行うだけでも人手や時間を多く取られてしまうことでしょう。
しかしIVRに一次対応を任せることができれば、一次対応・電話振り分けという業務を短縮することができます。
自動で対応した後に専門部署・担当者がすぐに対応できるため、電話応対スタッフの数を減らすこともできるでしょう。
・営業時間外にも対応ができる
IVRであれは営業時間外にも稼働でき、営業時間外の案内をおこなったり、問い合わせ内容によっては営業時間外でも担当者に繋がるように誘導するなど、柔軟な設定が可能です。
顧客側のメリット
・電話の待ち時間が減る
IVRの導入は企業側だけでなく顧客側にもメリットとなります。自動音声によって適切に振り分けが行われるため、顧客は自分の用件に合わせてプッシュできます。たらい回しされることなく適切な部署・担当者につながることで、ストレスから解放されることでしょう。結果的にこれは顧客満足度向上にもつながります。
・問題解決までの時間短縮
IVRで電話の待ち時間が減るだけでなく、問い合わせの内容によってはIVRのみで対応が完了するケースもあります。
例えば営業時間に関する質問や、実施中のキャンペーンに関する質問など、頻繁に問い合わせがある項目について企業側が音声案内できるよう設定しておけば、顧客がその選択肢を選んだときにIVRのみで問題が解決でき、人力での対応が不要になります。
おすすめのIVR活用方法
IVRは自動音声により電話の一次対応を任せることができるシステムです。そのため、電話対応が多い大企業やコールセンターといった業種においてその力を大いに発揮してくれます。
従来であればスタッフが顧客からの問い合わせ内容を伺って、適切な部署・担当者につないでいました。対応数が少なければあまり問題となりませんが、対応数が増えると電話番を多く配置しなければなりません。また、人力による対応スピードや正確性には限界があります。
IVRによる自動対応であれば、顧客自身が自分の問い合わせ内容に合わせてダイヤルをプッシュすることで、自動的に最適な担当者へと繋がります。一次対応を自動化できるため人件費を削減できますし、効率的かつ正確に振り分けを行えるようになるため業務を効率化できることでしょう。
さらに、営業電話や勧誘電話への対応といったケースにもIVRは役立ちます。
特に大企業の場合は毎日多くの営業電話がかかってきます。その対応に貴重な人材が割かれるのは効率が良くありませんし、しつこく営業電話がかかってくる場合は業務に支障をきたす可能性すらあるでしょう。IVRを導入すれば営業電話等の対応も自動音声でカバーできます。しつこく迷惑な営業電話についてはブラックリスト登録でき、着信そのものを拒否することも可能です。
そのほかにも、取引先企業の電話番号をあらかじめ登録しておくことで、IVRを経ずに直接最適な担当者へと繋がるように設定することもできます。
IVRの導入パターン
IVRには従来型であるオンプレミス型や、インターネット回線を使用するクラウド型、さらにはPBXに付随しているケースもあります。それぞれどのような特徴があり、どのようなケースで導入されているのかを解説していきます。
クラウド型かオンプレミス型か
IVRシステムにはオンプレミス型とクラウド型があります。
オンプレミス型はIVRの専用機器をオフィス内に設置するタイプで、アナログ回線によってつながり自動応答を行うものです。オンプレミス型は専用機器の購入や設置工事、回線工事、月額利用料といったさまざまな費用が必要で、実際に導入するには数十万円、場合によっては数百万円かかるケースがあります。機器の保守は自社で行う必要があるなど、費用が多くかかります。
クラウド型は、専用システムをインターネット上のクラウドに設置するものです。オフィス内へ物理的に機器を設置するわけではないため、機器購入費用や工事費用はかかりません。契約から最短で即日~数日程度で利用できるため、スムーズに導入可能です。システムの保守点検はベンダー側が行うため、企業側の手間がかからない点もメリットです。導入ハードルが低く運用もしやすいということで、コールセンターや大企業はもちろん、中小企業での利用も広がっています。
クラウドPBXに付随するIVRを利用するケースも
IVRは、IVR単体のシステムを導入するだけではなく、「クラウドPBX」にIVR機能が搭載されているケースもあります。このケースではPBXシステムを導入すれば、個別に契約することなくIVRシステムを利用可能です。
クラウドPBXは、インターネットを使用してビジネスフォン機能や各種機能を利用できるシステムです。外出中でもスマホを使って外線・内線を活用できます。そのため、担当者が外出中であってもIVRによって振り分けられた着信にすぐ対応できます。わざわざ会社に戻ったり、折り返し電話をしたりする手間がかからないため、スムーズな顧客対応を行えるでしょう。
クラウドPBXは、ビジネスに役立つさまざまな機能を利用できますが、その中にIVR機能が搭載されているケースが多くあり、オプション追加するなどですぐに自動音声応答を活用できるのです。
費用面でもIVRを契約するよりお得感があるため、現在では多くの企業でIVR機能が付帯しているクラウドPBXを導入しています。
IVRの比較ポイント
IVRと一口に言ってもさまざまな形態がありますし、サービスを提供しているベンダーも数多くあります。実際にIVRを導入しようと思っても、どのようにサービスを選べば良いか迷ってしまうことでしょう。
ここではIVRを比較する際のポイントについて紹介します。
自社の導入目的を整理しよう
まずは、「なぜIVRを導入するのか」目的を明確にしておくことが重要です。目的によって導入すべきIVRサービスが異なるためです。
例えば、日常的に大量に着信する電話をIVRによって効率的にさばきたい場合は、同時に対応可能な着信数が多いサービスを使う必要があります。
一方、同時着信は多くないものの、選択肢をしっかり作り込んで適切に誘導したい場合は、カスタマイズ性が高いサービスが必要です。
その他、既存システムと連携させて顧客管理を効率化させたい場合は、自社のシステムと連携できるものを選ばなければなりませんし、IVRによる誘導の内容を分析したい場合は、分析機能が充実しているものを選ぶ必要があります。
このように、IVRの導入で実現したいことによって最適なサービスは異なります。何らかのこだわりたいポイントがある場合は、あらかじめ明確にしておき、選定に役立てましょう。
導入形態
IVRシステムは前述の通り、大きく分けて3つの形態があります。
- オフィス内に専用機器を設置するオンプレミス型
- クラウド上にIVRシステムを設置するクラウド型
- PBXの付帯機能として利用できるタイプ
の3つです。
オンプレミス型は専用機器の導入コストが高く、工事期間も必要であるため、実際に利用するまでには時間がかかります。また、月額料金だけでなく保守点検を自社で行う必要があるため、ランニングコストが多くかかってしまう点がデメリットです。
クラウド型は物理的に専用機器を設置する必要がなく、導入コストが低く、すぐに利用できる点がメリットです。保守点検はベンダー側で行うため、労力・コストを削減できます。ただし単体で導入する場合は、自社の電話環境システムとIVRシステム両方を契約して、それぞれ月額料金の支払いが必要となります。
現在多くの企業で導入されているのは、IVR機能が搭載されているクラウドPBXです。クラウド型であるため導入ハードルが低く、IVRの月額料金も数千円程度からとリーズナブルであることがほとんどです。保守点検はクラウド型であるため、ベンダー側で行うので心配はありません。また、IVR機能だけでなく、クラウドPBXに搭載されたさまざまな機能を活用することができ、業務効率化やコスト削減を実現できます。
利用できる機能
IVRはサービスによって搭載されている機能が異なります。また、登録できるメッセージやフローの数もサービスによって違ってくるため、自社の抱える課題に合ったものを選ぶことが大切です。
IVRツールは単に自動音声対応をおこなうだけでなく、電話の振り分けやオペレーターにつなぐ前に必要な情報を取得する機能、折り返し電話の予約機能などさまざまな機能を活用することができます。
基本的に、多機能なIVRツールであるほど料金も高くなります。搭載されている機能を余すことなく利用できているのであれば問題ありませんが、自社で使わない機能が多いなら無駄が発生しているかもしれません。
自社の業務には何が必要なのかを洗い出し、それに見合ったサービスを選ぶようにしましょう。
IVRツールの主な機能についてはこちらの記事でも詳しく解説しています。機能を軸にツールを選びたい方はぜひご覧ください。
費用
オンプレミス型は、専用機器の設置や工事が必要となるため導入コストが多くかかります。保守点検も基本的には自社で行うこととなるため、月額料金以外のランニングコストも頭に入れておかなければいけません。
クラウド型やクラウドPBXは導入コストや保守コストが低く、費用を抑えることができます。ただし、オプションを追加する場合はその料金がかかるため、実際にどのような機能を必要とするかじっくり検討した上で契約することが大切です。
導入によってどのような業務を効率化したいのかを明らかにした上で、ベンダーに見積もりを取るようにしましょう。そうすれば、無駄を省くことができますし導入後のミスマッチを防ぐことができます。
同時通話数
テレビショッピングや予約システムの電話受付など、同じタイミングに多くの電話がかかってくることがある場合は、同時に受信・発信が可能な通話数をチェックしておきましょう。
あらかじめ自社が必要とする同時通話数を確認しておき、その上でツールの同時通話数上限を確認しましょう。ツールによっては同時通話可能数が無制限のものもあります。
サポート体制
導入時やトラブルが起きた際にどのようなサポートが受けられるのかもチェックしておきましょう。
導入時はIVRによる対応のシナリオ設定などさまざまな初期設定が必要となります。自社に合った設定を実現するためにも、ベンダーの導入サポートが受けられるとよいでしょう。
また、運用中も、万が一IVRが停止したり問題が起きたりした場合にすぐ回復できなければ、顧客の利便性が下がってしまいます。問題が起きた際にどのようなサポートが受けられるのかという点も事前に確認しておきましょう。
まとめ
今回はIVRの基礎知識や、最新版のおすすめIVRツールについてご紹介しました。
IVRはオンプレミス型やクラウド型、PBXに付帯するものなどがあります。オンプレミス型は導入コストの高さや工事が必要であるため、現在ではあまり選ばれません。
費用面や導入までのスムーズさ、さまざまなWeb機能との連携などを考えた場合、クラウド型・PBXを選ぶほうが現実的であると言えるでしょう。
本記事を参考に、自社に最適なIVRの導入方法をご検討ください。