IVRは顧客からの問い合わせに自動で応答できるシステムです。あらかじめ設定した音声により一時応答できるため、とても便利なシステムと言えるでしょう。しかし音声ガイダンスであるため、複雑な内容を伝えることは難しいでしょう。
そこで活用したいのが、IVRと連携してSMSを送信するサービスです。顧客に文字で伝えることでわかりやすくより深い情報伝達を行えます。オペレーターが対応しなくても自動で送信できるように設定できるため、スタッフへの負担も軽減できます。
今回はIVRと連携できるSMS送信サービスの概要やメリット、運用する上での注意点を解説します。
目次
IVR(自動音声応答システム)とは
IVRは顧客から問い合わせに対して事前に設定しておいた案内や選択肢によって自動音声応答するシステムです。問い合わせ内容に応じたプッシュ操作や音声認識によって担当部署や担当者に取次ぐことができます。
電話番スタッフの配置や取次業務をIVRに任せられるため、業務効率化やコスト削減といったメリットがあります。問い合わせ内容に合わせて取次されるため、担当者も専門知識のみを持っていれば対応できるので業務に集中できます。また、顧客はプッシュ操作等で担当者につなぐことができてスムーズに問題解決できるため、顧客満足度向上にもつながります。
その一方で、設定された音声が長かったり選択肢が多かったりすると顧客はなかなか担当者にたどり着けません。その結果、ストレスを溜めてしまい顧客満足度を低下させる可能性があります。また、わかりにくい内容や複雑な選択肢、階層が深すぎるといったことが顧客の不満につながる可能性もあります。
IVRを導入するならば、業務効率アップはもちろん顧客満足度向上を実現できるように運用しなければ意味がありません。本格的に導入して運用するのであれば、顧客にとってわかりやすくスムーズに問題解決できるように設定しましょう。
IVRはSMSと連携させてさらに便利に
IVRを運用する際、あまり複雑な内容を自動音声に設定してしまうと顧客は混乱してしまいます。どの選択肢を選べば良いのか、案内の内容がわからないといった状態になれば、顧客満足度を低下させてしまうことでしょう。
しかし、自社のサービス内容によっては多くの情報を伝えなくてはいけない場合もあります。そうしたケースで便利なのがIVRとSMSの連携です。音声では伝えにくい、情報量が多くなりすぎてしまうような情報もSMSでテキストとしてまとめて送ることができます。顧客は情報を可視化でき、落ち着いて理解できるため、必要な内容を伝えやすくなることでしょう。
SMSとは
SMSとはショートメッセージサービスのことで、短いテキスト文章を電話番号宛に送信するサービスです。友人・知人同士でメッセージを送り合ってチャットすることもできますし、企業がサービス情報を送信するのにも利用できます。例えば、新商品のお知らせやサービスのアンケート調査、料金支払いの請求など様々なシーンで利用されているのがSMSです。
IVR連携ができるSMS送信サービスを使うメリット
では、具体的にIVRとSMSを連携することでどのようなメリットがあるのか、以下で具体的に解説していきます。
文字情報で伝達できる
IVRの自動音声は音のみの情報となるため、情報量が多くなったり複雑な内容になったりすると顧客に伝わりにくくなります。そういった場合に「詳しい内容はSMSにて送信しますのでご確認ください」という音声案内をしてSMS送信を行うと難しい情報も伝達しやすくなります。
文字は音声と違って何度も読み返すことができますし、可視化できるため情報を頭で整理しやすくなります。そのため、複雑な内容もわかりやすいのです。正確に理解してもらえれば、顧客も問題解決しやすく満足してくれやすいでしょう。
Webサイトへの誘導も可能
SMSにはテキスト文章だけでなく、URLリンクも貼り付けられます。音声でURLを読み上げて伝えるのは至難の業ですが、SMSならばリンクをクリックするだけですぐに該当ページに飛べるため便利です。キャンペーンやイベントサイトへ誘導したい際などに有効活用できることでしょう。
また、リンク先のWebページでは画像や動画を使ってさらに詳細な情報紹介を行えるため、顧客も理解しやすくなるメリットもあります。
自動送信により担当者の負荷を軽減
テキストメッセージの送信はこれまでメールソフトを使って担当者が手作業で行っていました。しかしIVRとSMSを連携させれば、送信作業を自動化できるためスタッフの業務負担を削減できます。メッセージの送信作業がなくなることで、スタッフは他の業務に集中できるため、業務効率化を実現できるようになるでしょう。
電話以外のチャネルを設けて機会損失を減らす
オペレーターを多数配置していたとしても、イベントやキャンペーンなどを行えば問い合わせが増えて対応しきれない可能性があります。保留時間が長すぎて電話が切断されたり、顧客が待ちきれずに問い合わせを諦めたりといったケースも増えることでしょう。企業にとってこうした問い合わせを取りこぼしてしまうのは機会損失となります。
IVRと連携してSMSを自動送信できるようにしておけば、こうした機会損失も減らせます。自動音声で「予約フォームをSMSでお送りします」のように伝えてURLを貼り付けたSMSを送信すれば、該当Webサイトに誘導可能です。
自己解決率の向上
IVRとSMS送信サービスを連携させることで、顧客の自己解決率を向上させられます。
IVRは顧客からの問い合わせ内容に優先順位をつけ、適切なチャネルへ誘導できるのがメリットです。例えば、顧客が問い合わせた内容がよく寄せられる質問である場合、電話対応だとオペレーターに問い合わせの詳細を話した上で、その解決方法について聞かなければなりません。スムーズに回答が得られれば良いですが、なかなか電話がつながらなかったり別の部署へつながれたりして、問題解決までに時間がかかってしまうことがあります。このような場合は、SMSを送信してよくある質問などのFAQページへ誘導した方が、スムーズに解決できる可能性が高いです。
このように、問い合わせ内容に優先順位をつけ、SMSで適切なチャネルへ誘導できれば、オペレーターの負担は軽減します。また、顧客は「自分で解決できた」「オペレーターと話す手間が省けた」といったように満足度が高まります。そして「また利用したい」と感じやすくなるでしょう。これにより、顧客の自己解決率を高めることができ、リピーター獲得に良い影響を与えることができるわけです。
営業時間外の対応が可能
IVRシステムは24時間いつでも対応できます。早朝・深夜・定休日などの営業時間外であっても自動音声にて応答可能です。もちろんIVRと連携したSMS送信サービスも24時間365日対応できます。スタッフを休日出勤させることなく、顧客からの問い合わせをしっかり拾い上げることができます。
顧客満足度の向上
IVRとSMS送信の連携は顧客にとってもメリットがあります。IVRを導入して顧客をスムーズに誘導できれば顧客満足度向上につながります。しかし、あまりに長すぎる音声や複雑な内容は理解しにくく顧客を混乱させてしまうことでしょう。結果的に顧客は不満を感じてしまうかもしれません。
SMSと連携すれば、音声だけでは伝わりにくい内容をSMSで送信できます。顧客は送られてきたSMSを読み、理解した上で次の行動を取って問題を解決することができるでしょう。IVRでは対応が難しい部分をSMSが補うことで、顧客満足度をより高めやすいというわけです。
全ての携帯電話のキャリアや端末に送信できる
SMSは、キャリアや端末を問わず送信できるのが大きな強みです。そのため、問い合わせをしてきたすべての顧客に対して、IVRとSMS送信の連携はメリットのあるものといえます。
スマホには、ドコモ・au・ソフトバンク・楽天などさまざまなキャリアがあります。また、機種もさまざまです。それぞれで細かい操作方法などには若干の違いがあります。
しかし、SMSは電話番号さえあれば、どのキャリアのどの機種のスマホにも送信できます。OSに合わせてアプリを開発する必要はなく、顧客も対応を受けるためにわざわざアプリを導入する手間がかかりません。
このようなことから、IVRと連携できるSMSは、顧客対応において有効な手段であるといえるでしょう。
IVR連携ができるSMS送信サービスのデメリット
IVR連携ができるSMS送信サービスには、前述の通りさまざまなメリットがあります。しかしその一方で、以下のようないくつかのデメリットもあるため注意が必要です。
SMSでは対応しきれない場合もある
SMSは、ユーザーの端末機種やキャリアを問わず送信できるのがメリットです。しかし、SMSは送信できる文字数に制限があります。具体的には、全角で670文字、半角英数字で1,530文字までです。決して少ない文字数ではありませんが、問い合わせ内容によってはこの制限を超えてしまうこともあるでしょう。また制限内に収めるために、不自然で分かりにくい内容になってしまうこともあります。
加えて、電話対応でなければ解決が難しいような問い合わせもあることも覚えておかなければなりません。SMSでは対応しきれないこともあるのを踏まえた上で、必要に応じてオペレーターが対応できる体制を整えることが、顧客満足度を高めるために大切であるといえるでしょう。
料金が割高になる可能性がある
SMS送信は、オペレーターによる対応よりもかかるコストが割高になる可能性もあります。
SMS送信サービスは、SMSの送信数や開封数によって料金が決まります。サービスによって料金体系は異なりますが、月に1,000通までは◯◯円で、それ以降は1通ごとに◯◯円といったように設定されているのが一般的です。つまり、月間の対応数が多く送信数や開封数が多い場合は、オペレーターが対応するよりもコストが高くなってしまうことがあるわけです。例えば、キャンペーンや新商品発売などで問い合わせ件数が増加するようなタイミングでは、SMS送信数も一気に増える可能性があります。運用してみてどれくらいのSMS送信数・開封数があるのかを確認し、自社に合ったプランを選ぶようにしましょう。
IVR連携ができるSMS送信サービスの利用シーン
IVRでは伝えきれない内容もSMSと連携すればスムーズに伝えることができます。その結果、顧客はそれほどストレスを感じずに問題解決したり、サービスを利用したりできることでしょう。では実際にどんな場面でIVRと連携したSMS送信が使われているのか、具体的にいくつか紹介していきます。
関連URLへの誘導
SMSはテキストのみを送信できるメッセージサービスです。基本的に画像は送ることはできませんがURLの送信は可能です。
例えば、新商品の紹介をしたい場合。商品画像を送ることはできませんが、新商品が掲載されたURLを送信することができます。顧客は必要であればそのURLをクリックして画像や詳細情報を視覚的に知ることができるわけです。
新商品の紹介以外にも、イベント・キャンペーンサイトへの誘導、クーポンページへの誘導、予約ページへの誘導など様々なシーンで利用できます。
本人認証や契約内容の確認等
IVRとSMS送信を連携することで本人確認や契約内容の確認・変更等を行うこともできます。
携帯電話番号は一つの端末に一つしか割り当てることができませんし、携帯電話を契約するためには身分証明が必要です。そのため、SMSを活用して本人認証するケースが増えています。セキュリティが高いことはもちろんですが、SMS送信されたコードを入力するだけで本人確認できるため、顧客にとっても手軽にできるメリットがあります。
また、契約書や保証書、取扱説明書などは紙ではなくデジタルデータを採用する企業が増えています。これらの書類は普段使わないことが多いですが、いざという時にどこにしまったかわからなくなる場合があります。そういった時、顧客は企業に問い合わせを行ってSMS送信してもらい、そこに記載されたテキストの内容やURL先にて書類を確認することができるのです。住所変更や契約内容の確認・変更などもSMSで送られてきたURLから簡単に行えます。
商品・サービスに対するアンケート
業績アップには顧客から商品やサービスに関する評判を知ることが大切です。寄せられた意見を基にサービス内容を見直したり、商品を改良したりすることができるためです。
顧客からの意見を集めるのに最も良い方法、それはアンケート調査でしょう。しかし、アンケート会社に依頼すれば多額の費用がかかりますし、実施までに多くの時間が必要となります。そこで活用したいのがIVRと連携したSMS送信です。
SMSによるアンケートはメールやDMよりも回収率が高い傾向にあります。また、自社で気軽に定期的に実施できるため、顧客ニーズの把握に役立ちます。
アンケート調査以外にも、キャンペーンやイベント情報の送信、休眠顧客掘り起こしのための販促活動といったシーンでも利用可能です。
重要連絡のリマインド
SMSはメールよりも開封率が良く、DMよりも反応が良い傾向にあります。そのため、重要事項の連絡にSMSを活用する企業は少なくありません。しかも事前に設定して自動で一括送信できるため、スタッフの業務を簡略化できます。
例えば、工事や点検日のお知らせ、契約更新日の事前連絡、支払い請求など重要な連絡のリマインドとしてSMSは活用されます。また、ホテルや飲食店の予約日のリマインドとしても活用可能です。
SMS送信によるリマインドは企業にとって円滑に業務を行えるようになるだけでなく、顧客も当日になって「忘れてた!」と慌てることがなくなるため、双方にとってメリットがあります。
IVR連携ができるSMS送信サービスを利用する際のポイント
IVRと連携できるSMS送信サービスは上手に活用すれば業務効率をアップさせて顧客満足度向上にもつながります。最後に、SMS送信サービスの活用を成功させるために知っておくべきポイントをまとめました。
SMS送信の件数で料金が決まる
SMS送信サービスはメッセージの送信ごとに料金が発生します。通常は1通あたり8~12円程度ですが、IVRシステムと連携させるのであれば別途料金が必要です。連携する場合の料金はサービスごとに様々で、1通あたり12~20円程度とするケースやシステム利用料で月額料金を加算するケースもあります。
業務を行う上でどの程度のSMS送信を行うのかを把握し、送信単価も理解した上でサービスを利用しましょう。
クラウド型とオンプレミス型がある
IVRシステムには、インターネット上にシステムを設置するクラウド型と自社に機器を設置するオンプレミス型があります。
クラウド型は導入コストが低く、メンテナンスやシステムアップデート、追加オプションの導入を容易に行えます。
オンプレミス型は導入コストが高いものの、自社に合わせたカスタマイズをしやすく長期利用にも向いている傾向にあります。
コストや使い勝手を比較して、自社に合ったものを選ぶようにしましょう。
使いやすいサービスを選ぶべき
IVRと連携したSMS送信サービスは、提供するベンダーによって操作感や使い勝手が異なります。可能であれば、実際に使ってみて自社業務にマッチするかを確認してから本格導入した方が良いでしょう。
ベンダーによっては無料体験や試用版にて一定期間お試しできる場合があります。ぜひそういったサービスを活用して、自社に合ったサービスをお選びください。
IVRとSNS送信を連携させた事例
メリットやデメリット、利用シーンなどを考慮した上でIVRとSMS送信を連携させれば、想定したよりも遥かに良い結果を得ることができます。ここでは、それぞれのツールを連携させることで、より良い成果が得られた事例を3つ紹介します。
ウェブサイトへの誘導が増えた事例
コールセンターで、オペレーターの声や自動音声にて「エイチティーティーピーエスコロン……」のようにURLを伝えるのは時間がかかりますし、聞き間違いが発生しやすいものです。そのため、このような手段ではWebサイトへの誘導率はなかなか高まりません。
しかし、SMSで送信すれば時間がかからず、すぐにURLを伝えられます。記載されているWebサイトのURLをタップするだけなので、間違えることなく遷移してくれることでしょう。また、問い合わせをしてくれる積極性のある顧客ですので、SMS開封率や誘導率も高まることが予想できます。実際に、大手電力会社では、PCへメールを送信していたころと比べて、Webサイトへの誘導率が4倍以上に高まったそうです。
申込サイトへの誘導が増えた事例
近年、ECサイトを利用する人が増え、対応オペレーター数が不足傾向にあります。そんな中で、テレビ番組やCMで商品が放送されて電話注文が殺到してしまえば、オペレーターが対応しきれずにあふれ呼や待ち呼が大量発生してしまいます。忍耐力のある顧客はそれでも待ってくれるかもしれませんが、多くの顧客は「混んでいるからいいや」と諦めてしまいます。これは、大きな機会損失であるといえます。
しかし、SMS送信とIVRを連携させれば、オペレーターが対応中にIVRにて顧客をSMS送信でWebサイトに誘導可能です。欲求が高まっている顧客は「空いていて確実に注文できる方にしよう」という心理が働き、Webサイトへ誘導されやすくなります。
実際にこのような施策を行った大手通販販売会社では、SMS送信したサイトURLのクリック率が60%を超えたのだそうです。
サンプルモニターへのアンケート誘導の事例
通販サイトなどでは、サンプルを特定のモニターに無料で配布して、商品開発の参考にすることがよくあります。しかし、モニターからのアンケート回収率が低ければ意味がありません。アンケート回収率が低くなる理由はさまざまありますが、モニターの属性に合わせて興味をひかせるようなSMSを送信できないと、開封率やクリック率が低下しやすい傾向にあります。
ある通販サイトでは、顧客の問い合わせ履歴をデータベースに送り、エンドユーザーごとに異なる内容をSMSで送信するという施策を行いました。さらに、IVRの音声内容をリアルタイムで変動させ、より適切なガイダンスを流したそうです。
これにより、顧客ごとに興味をひける内容のテキストを送ることができてSMS開封率が高まり、アンケートサイトへの誘導率も高まったとのことです。
まとめ
今回はIVRと連携してSMSを送信するサービスの概要紹介や解説を行いました。
IVRは顧客からの問い合わせに対して自動で一時応対できるシステムです。問い合わせ内容に合った担当者に振り分けできるため、企業・顧客双方にメリットがあります。その一方で、音声のみの案内となるため、難しい内容の場合は情報を正しく伝えきれないこともあります。
SMS送信は、そういった場合に活用できるサービスです。文字で詳細情報を送れるため、URLの送信やアンケート調査を行えます。また、スマホの特徴を活かして本人確認や契約内容も可能です。上手に活用して業務効率化や顧客満足度向上を実現しましょう。