最終的な目標を設定しているものの、なかなか達成できずに困っているコールセンターは多いのではないでしょうか。そのようなお悩みがある場合、KPIが正しく設定できていない可能性があります。「コールセンターに合うKPIとは?」という疑問をお持ちの方もいることでしょう。
今回は、コールセンターでKPIを設定すべき理由、おすすめのKPIの指標、KPI設定で重要なポイントについて解説します。
目次
そもそもKPIとは
KPIとは、「Key Performance Indicator」の略で、「重要業績評価指標」と呼ばれます。ビジネスにおいて最終目標(KGI)を達成するためには、その過程ごとに目標達成度合いを評価し、方向性が合っているかを確認しなければなりません。KPIはそのために用いられる指標のことです。
KPIをより分かりやすくいえば、最終目標達成のための中間目標といえます。最終目標というゴールへまっすぐ向かうために設定する、道しるべのようなものをKPIと考えるとイメージしやすいかもしれません。ゴールがどこなのかが分かっていても、KPIが設定されていないと、途中で迷ったり回り道をしてしまったりすることがあります。そしてゴールへ期限内にたどり着けずに終わってしまう可能性もあります。
KPIはそうした回り道をせずに、効率良くゴールへ向かうためのものです。KPIを設定して管理しながら課題を洗い出し、改善を積み重ねていくことで、ゴールへ最短でたどり着けるようにします。
コールセンターでKPIを設定するべき理由
コールセンターでKPIを設定すべき理由、それはKPI設定がコールセンターの課題解決の近道になるためです。
どのコールセンターでも目標を掲げていますが、到達できずに悩んでいるところも少なくありません。これは、最終目標達成を阻む課題解決に向けて、何が必要なのかが分かっていないためです。
例えば、クレームを10%削減するという最終目標を立てた場合、クレームが多いことが課題ですが、このままでは原因そのものは分かりません。特にコールセンターは人の入れ替わりが激しい傾向にあり、日々多くの対応をしなければならないため、何もしなければ原因の追究は難しいことでしょう。
KPIを設定すれば、クレームに関連する指標が浮き彫りになります。そのため、最終目標を達成するために解決すべき課題も分かります。
コールセンターで設定するKPIの例
KPIにはさまざまなものがありますが、コールセンターで設定するのにおすすめのKPIは以下の通りです。
応答率
応答率とは、総着信数(IVRも含む)に対してオペレーターが対応した割合を示します。「対応件数÷着信件数」で求められます。例えば、総着信数が2,000件でオペレーターの対応件数が1,500件あるならば、応答率は75%となります。
応答率が想定よりも低いのであれば、着信件数あたりのオペレーターの数が足りていないということが分かります。解決するためには、オペレーター数を増加させることが必要です。
放棄率
放棄率とは、総着信数に対してオペレーターが対応できなかった割合を指します。例えば、オペレーターが対応する前にコールが切れてしまった場合は放棄されたコール=放棄呼となるわけです。放棄呼はアバンダンコールとも呼ばれます。
放棄率は「放棄呼数÷着信件数」で求められます。放棄率が高い場合は、オペレーターの数が足りていないということです。
また、前述の応答率と放棄率は対の関係にあります。例えば、応答率が75%ならば、放棄率は15%となるわけです。
サービスレベル
サービスレベルとは、設定時間内にオペレーターが顧客からの電話に出て、対応できた件数の割合のことです。「設定時間内の対応件数÷着信件数」によって値を求められます。例えば、設定時間は20秒、着信件数が2,000件で時間内の対応件数が1,600件ならば、着信から20秒以内のサービスレベルが80%となります。
応答率とサービスレベルは比例関係になりやすい傾向にあります。そのため、応答率を改善するとサービスレベルも向上しやすくなります。
平均応答速度
平均応答速度とは、顧客からの着信からオペレーターが応答するまでの時間の平均値のことです。「総保留時間÷着信総数」によって値を求められます。顧客が電話をかけてからどれくらい早く応答できたか、それはつまり顧客の待ち時間のことです。平均応答速度が低い値であればあるほど、顧客は待たされることなく問い合わせできるということになります。そのため、顧客満足度につながる指標といえます。
顧客満足度
顧客満足度とは、その言葉通り顧客が企業の提供している商品・サービスに対してどのくらい満足しているかを表す指標のことです。「Customer Satisfaction」を略してCSと呼ばれることもあります。
顧客満足度の計測方法はアンケート調査が一般的です。CSが高いサービスはリピーターも獲得しやすいため、業績につながる指標といえるでしょう。
顧客推奨度
顧客推奨度とは、顧客が企業に対してどのくらいの信頼・愛着を持っているのかを示す指標のことです。顧客満足度と同様に、顧客推奨度を計測するにはアンケート調査を実施するのが一般的です。アンケートには「0〜10」の数値で回答してもらいます。9〜10であれば推奨者、7〜8であれば中立者、0〜6の場合は批判者として分類します。そのうえで、「(推進者-批判者)÷全体数」という計算を行って値を求めます。
顧客満足度と似ていますが、その値を求める方法からより精密な結果を知ることができます。そのため、顧客推奨度は業績との相関性が高く、導入するコールセンターが多いです。
クレーム発生率
クレーム発生率とは、企業の商品・サービスに対して、顧客の不満足度を表した指標のことです。「苦情件数÷全応答件数」によって値を求めます。
コールセンターは他の業種と違い、顧客の声を直接受けられます。そのため、通話を通じて調べることが可能です。
Thanks Call発生件数
Thanks Call発生件数とは、顧客から電話・メール・手紙などでお礼をいただいた件数を指します。オペレーターが満足できる対応をしたり、顧客の悩みをスムーズに解決したりした場合にお礼をいただくことがあります。カウント方法はお礼をいただくたびに、手動でツールなどに入力します。
稼働率
稼働率とは、勤務時間中にオペレーターがどのくらい顧客対応に時間をかけたかを示す指標です。「(応対時間+保留時間+後処理時間+待機時間)÷労働時間」によって値を導きます。オペレーターが行う顧客対応には電話だけでなく、メールやチャット対応などもあります。研修や面談、離席時間などは非生産時間として、省くのが一般的です。
稼働率が高い場合、オペレーターは効率良く顧客対応を行えていることになります。しかし、100%に近い場合は、業務負担がかかってしまっていますので注意しなければなりません。
平均処理時間
平均処理時間とは、オペレーターが顧客対応にかけている時間の平均値のことです。顧客対応には、通話やチャットはもちろん、対応後の後処理の時間も含みます。そのうえで、「(総通話時間+総後処理時間+総保留時間)÷着信総数」によって値を求めます。
一般的にコールセンターにおいては、平均処理時間が短いほどサービスレベルが反比例して上がります。処理時間が減少すれば、オペレーター1人あたりの対応できるコール数も多くなりますので、業務効率が高まっているといえるでしょう。
平均通話時間
平均通話時間とは、オペレーターが顧客との通話で使う平均時間のことです。「総通話時間÷対応総数」によって値を求めます。
平均処理時間と似ていますが、平均通話時間は通話時間のみで考える指標です。通話時間が長いと丁寧な対応がしやすい反面、1人あたりの対応数が減りやすくなります。通話時間が短いと対応数は増えやすいものの、対応が雑になり、顧客の問題解決が果たせない可能性があります。
このことから、平均通話時間はコールセンターごとに応対品質と生産性をバランス良く両立できる目標を立てなければなりません。
平均後処理時間
平均後処理時間とは、電話やチャットでの対応後に行う後処理にかけた平均時間のことです。「後処理時間の合計÷対応件数」によって求めます。
コールセンターでは、顧客対応後にオペレーターが対応履歴の記入などの後処理をします。後処理も重要な業務ではありますが、時間をかけてしまうと対応件数が減ってしまい、生産性が低下します。そのため、設定した数値よりも時間がかかっている場合は、後処理の業務効率化が必要です。
一次完結率
一次完結率とは、顧客が1回の問い合わせで問題解決できたかどうかを測る指標です。「1度のサポートで完結した件数÷全対応数」で求めます。
一次完結率が高ければ、効率良く顧客の問題を解決できていることが分かります。
ミス率
ミス率とは、業務を進めるうえでどのくらいミスがあったのかを示すものです。
コールセンターごとに作業内容が異なりますので、ミスの定義も異なります。そのため、正しく算出するには、ミスの定義を明確にしたうえで測定方法を決めなければなりません。
エスカレーション率
エスカレーション率とは、オペレーターのみで顧客対応できず、上司または他部署へ相談・質問した率のことです。「相談した件数÷全対応数」によって求めます。
エスカレーション率が高い場合、オペレーターの知識が不十分である、または情報・資料などが不足している可能性があります。
コストパーコール
コストパーコールとは、1件あたりの電話対応にかかっているコストを示すものです。「コールセンターの総コスト÷処理件数(対応件数)」によって求められます。
コストパーコールが目標よりも高い数値である場合、コスト削減のために業務効率化を検討しなければなりません。
欠勤率
欠勤率とは、勤務予定日数に対してオペレーターが欠勤した日数の割合のことです。
欠勤率が増加傾向にある場合、業務を進めるうえで身体的・精神的負担がオペレーターにかかっています。欠勤率が高ければ大切な人材を失うことにもなりますので、早期の対策が必要です。
離職率
離職率とは、ある期間の中で離職したオペレーターの割合を示すものです。「離職者数÷労働者数」によって求めます。
多くのコールセンターでは人手不足に悩んでおり、中には離職率が高いところもあるようです。オペレーターを定着させて業務を堅実に遂行するためにも、離職率の低い職場環境を実現できるように対策することが必要です。
コールセンターでKPI設定する際に重要なポイント
コールセンターでKPIを設定する場合は、以下のポイントをおさえておきましょう。
目的を明確にする
コールセンターでは設定・管理するKPIが数多くあります。そのため、まずは最終目標であるKGIを明確化したうえで、必要なKPIを設定するのがおすすめです。
例えば、応答率の向上をゴールとして設定したとします。その場合、放棄率の減少はもちろんですが、サービスレベルの向上も目指さなければなりません。サービスレベルを高めるには、平均処理時間や平均応答速度を短縮するために、業務効率化を図る必要があります。
このように、ゴールを設定すれば必要なKPIが見え、それぞれの相関性を見ながら適切に設定・管理できるようになります。
優先順位をつける
自社にて改善すべきKPIはどれなのか、優先順位をつけることも大切です。
使えるリソースは限られていますので、多数あるKPIのすべての数値を一気に解決することは、現実的ではありません。KPIは最終目標に近いものほど重要度が高いので、それを優先して改善していくのがおすすめです。
現状を把握し課題を共有する
KPIを設定・管理し始めたら、必ず現状を把握したうえで課題をオペレーターと共有するようにしましょう。
例えば、高水準を維持できているKPIを伝えれば、オペレーターのモチベーションは高まることでしょう。その状態で改善すべきKPIについても共有すれば、モチベーションを保ちつつ課題解決に乗り出しやすくなります。
コールセンターのKPI設定・改善に役立つ03plusとは
03plusは、コールセンターのKPI設定や改善に役立つ機能を持つクラウドPBXです。
例えば、IVRを活用すれば電話の一次対応だけでなく、ダイヤルプッシュにより着信を振り分けて、知識やスキルのあるオペレーターへスムーズにつなげられます。そのため、顧客の問題を解決しやすくなることでしょう。
留守レポを活用すれば、着信が集中してしまった際にも自動で対応します。顧客に用件の録音を促してチャットにて通知しますので、顧客が何を求めているのかを把握したうえでの折り返しが可能です。
通話録音機能もありますので、録音データを後から聞き直して、対応品質の向上やオペレーター教育などに活用することもできます。録音することで聞き間違いなども防げますので、クレーム率の軽減にも役立ちます。
まとめ
今回は、コールセンターにてKPIを設定すべき理由やポイントについて解説しました。
コールセンターには日々多くの問い合わせが寄せられます。その対応に追われてしまうため、なかなか改善すべき問題点が可視化されにくいものです。しかし、KPIを設定すれば問題が可視化されて解決すべき課題が分かります。本記事を参考に、自社に合ったKPIを設定して、最終目標を達成できるようにしていきましょう。