ビジネスフォン機能を利用できる電話環境を構築するシステム「PBX」には、オンプレミス型とクラウド型があります。それぞれにどのような違いがあるのか、具体的に知っているという方は少ないのではないでしょうか。
今回は、オンプレミス型PBXとクラウド型PBXについて、それぞれのメリット・デメリット、両者の比較、オンプレミス型・クラウド型どちらを選ぶべきかについて解説します。
目次
オンプレミス型のPBXとは?
オンプレミス型PBXを理解するためには、まず2つの言葉の意味を知ることが必要です。「オンプレミス」とは、日本語でいうと「施設内で」という意味になります。「PBX」は電話環境を構築するための機器で、日本語では「電話交換機」などと呼ばれます。
つまり、オンプレミス型PBXとは、内線・外線・転送といったビジネスフォンの機能を利用するために、オフィス内に設置するPBXということになります。
オンプレミス型PBXと端末をつなぐ回線には、アナログ電話回線とインターネット回線の2種類があります。電話回線を使用するものは「(従来型の)PBX」、インターネット回線によってつなぐ場合は「IP-PBX」と呼ばれます。従来型のPBXはアナログ回線でつながっているため通話品質が高い一方で、配線がつながるオフィス内の固定電話でしか内線を使えません。IP-PBXはパソコンやスマホなどの端末を利用でき、外出先のスマホや遠隔拠点の端末と接続して内線化できます。
オンプレミス型PBXのメリット・デメリット
オンプレミス型PBXのメリットとデメリットを、以下でそれぞれ解説します。
メリット | デメリット |
---|---|
・カスタマイズ性が高い ・セキュリティを独自に充実させられる ・月額費用が掛からない | ・コストが高い ・メンテナンス(保守)に費用が掛かる ・導入に時間がかかる ・端末の増設の際は工事が必要 |
・メリット
オンプレミス型PBXのメリットは、カスタマイズ性が高くセキュリティ対策を充実させやすい点です。
自社にPBXを配置するため、独自ネットワークを構築でき、各種設定も自由にカスタマイズできます。機器の設置スペースや予算に余裕があるならば、高性能な機能を持たせることも可能です。
また、自社で使用しているシステムとの連携を前提にカスタマイズすることもできるため、既存の環境はそのままに、それに合わせる形でPBXを導入することができるでしょう。
さらに、自社でPBXを保守管理しますので、費用をかけられるのであれば強固なセキュリティ対策を施すこともできます。
このほか、オンプレミス型の場合は月額利用料といった形の費用はかかりません。ただし後述のようにメンテナンスには継続的に費用がかかります。
・デメリット
オンプレミス型PBXのデメリットとしてまず挙げられるのは、全体的なコストが高くつくことです。
オフィス内に設置するPBXを購入しなければなりませんし、設置して端末をつなぐには配線工事も必要です。そのため、初期費用は高額になる傾向にあります。保守管理を自社で行うため、業者に依頼するメンテナンス費用や自社での管理スタッフの人件費なども必要です。
また、導入に工事が必要ということは、導入にはコストだけでなく時間もかかるということです。申し込みから利用できるようになるまで数週間程度はみておかなければならないでしょう。
さらに、端末を増設する際にも工事が必要になり、それにもコストや時間がかかります。人事異動や人員増加などにスムーズに対応できない点もデメリットといえるでしょう。
クラウド型PBXとの違い
クラウド型PBXはオンプレミス型PBXと異なり、クラウド上にPBXを設置し、インターネット回線で各端末をつないでビジネスフォン機能を利用できる電話システムです。インターネット上にPBXがあるため、オフィス内にPBXの機器は必要ありません。
クラウドPBXの準備や設置はベンダー側が行いますので、自社で装置を購入したり工事する業者を手配したりする必要はありません。PBXはインターネット上にありますので、もし会社を移転した場合も、新たに設置せずにそのまま使えます。
クラウド型PBXのメリット・デメリット
クラウド型PBXのメリットとデメリットを、以下でそれぞれ解説します。
メリット | デメリット |
---|---|
・導入コストを抑えられる ・スマホから利用でき、外出中でも無料で内線通話が可能 ・回線の増減に対応しやすい ・対応する各種システムと連携できる ・災害時に損害を受けづらい | ・ネット回線の品質次第で通話品質が変わる ・月額費用が必要 |
・メリット
クラウド型PBXの大きなメリットは、コストを削減しやすいことです。PBX装置の購入や設置の必要がありませんので、初期費用を大幅に削減できます。また、インターネット回線によって端末をつなげていますので、インターネット環境があれば、スマホを用いていつでもどこでも内線通話が可能です。そのため、社内コミュニケーションを活発化させつつ、費用を抑えられます。
また、設定は全てクラウド上で行えるため、回線の増減も簡単に行えます。人員の増減に柔軟に対応できる点もメリットです。
他にも、さまざまな業務効率化に役立つITシステムを連携できたり、クラウド上にPBXがあるため災害時に損失が起きにくかったりといったメリットもあります。
・デメリット
クラウド型PBXはインターネット回線を用いて通話を行うため、インターネット環境が悪いと通話品質が低下する恐れがあります。
また、クラウド型PBXは保守管理をベンダーに任せることもあり、システムを利用するためには月額料金が必要です。料金面については、次章でオンプレミス型と比較していますので、そちらもご覧ください。
オンプレミス型PBXとクラウド型PBXとの違い
オンプレミス型PBXとクラウド型PBXにはさまざまな違いがあります。以下では、それぞれの違いを解説しながら両者を比較します。
費用の違い(導入費用・月額費用)
オンプレミスPBX | クラウドPBX | |
---|---|---|
導入費用 | 高い(数十万円~百万円以上) | 安い(数千円~数万円) |
月額費用 | かからない(保守管理に費用はかかる) | かかる(数千円~ 利用規模によって変動) |
まずは費用面を比較してみましょう。
導入費用については、クラウド型PBXの方が圧倒的に安いです。クラウド型PBXは初期費用として数千円~数万円程度の費用がかかります。一方でオンプレミス型PBXは装置の購入費、工事費、端末購入費などがかかります。電話環境の規模にもよりますが、小~中規模オフィスでも、数十万円~100万円前後かかることも珍しくありません。
月額費用については、オンプレミス型PBXの方が安く抑えやすいでしょう。オンプレミス型PBXは保守管理に費用をかける必要はあるものの、毎月かかるランニングコストはありません。クラウド型PBXは保守管理をベンダーに任せて機能を利用するサブスク型のサービスであるため、月額料金がかかります。
通話料金についてはそこまで大きな差はありませんが、クラウド型PBXは外出しているスタッフや遠方の拠点間の通話を内線化できます。そのため、社内コミュニケーションに関しては、従来型のオンプレミス型PBXより安く抑えられます。
通話品質の違い
オンプレミスPBX | クラウドPBX | |
---|---|---|
通話品質 | 高品質で安定 | 通信環境に依存 |
続いて、通話品質について見ていきましょう。
オンプレミス型PBXはアナログ回線を使用する従来型であれば、高品質で安定しています。途中で通話が途切れる、雑音が入るといったことはほぼありません。ただし、インターネット回線を用いるIP-PBXの場合は、通信環境によって通話品質が低下することもあります。
一方、クラウド型PBXはどうでしょうか。IP-PBXと同様にインターネット回線を使用しますので、やはり通信環境によっては通話品質が低下するかもしれません。
しかし近年は、インターネットの速度は速く安定していますし、クラウド型PBXの各ベンダーも質の高いサービスを提供していますので、そこまで大きな差は感じないでしょう。
利便性の違い
オンプレミスPBX | クラウドPBX | |
---|---|---|
利用できる場所 | オフィス内のみ | インターネットにつながる場所ならどこでも |
利便性についてはクラウド型PBXの方が優秀であるといえるでしょう。
オンプレミス型PBXは、従来型の場合はオフィス内でしか会社宛の電話を受けられません。そのため、不在着信があった場合には、オフィスに戻って折り返し連絡する必要があります。
一方、クラウド型PBXは、普段使っているスマホをそのままビジネスフォンとして利用できます。オフィス内はもちろん、外出先でも会社宛の電話を受けることが可能です。もちろん、会社代表番号を使って発信もできますので、顧客の応答率も良くなりやすいでしょう。
また、外出先のスタッフや遠方の拠点との連絡も内線扱いとなりますので、気軽に連絡を取ることもできます。
営業など外回りの多い企業では、特にクラウド型PBXの恩恵を受けやすいでしょう。
セキュリティの違い
オンプレミスPBX | クラウドPBX | |
---|---|---|
セキュリティ | ・外部からの攻撃を受けるリスクが低い ・費用をかければより強固にできる | ベンダーがセキュリティ対策を実施 |
セキュリティについては、オンプレミス型PBXのほうがより強固なセキュリティを作り上げることができます。
オンプレミス型PBX、特にアナログ回線を使用する従来型の場合、社内でネットワークを構築するため、サイバー攻撃のリスクはほぼありません。また、自社の業務に適したセキュリティ対策を施すことで、セキュリティをより強固にすることができます。費用をかけられるのであれば、どこまででもセキュリティを高められるのがオンプレミス型の特徴です。
クラウド型PBXはベンダー側がセキュリティ対策を行います。ベンダーにとって、サイバー攻撃は会社の信用を落とす脅威です。そのため、徹底したセキュリティ対策をとっています。実際に、クラウド型PBXがサイバー攻撃によって被害を受けたという事例は、現状では報告されていません。
カスタマイズ性の違い
オンプレミスPBX | クラウドPBX | |
---|---|---|
カスタマイズ性 | さまざまなカスタマイズが可能 ただし時間とコストを要する | オプションなどで手軽にカスタマイズが可能 ただしベンダーが用意したもののみ |
続いてカスタマイズ性について違いを見ていきましょう。
カスタマイズ性については両社にそこまで差はありませんが、手間がかからないという点ではクラウド型PBXに軍配があがるといえます。
オンプレミス型PBXは、ユニットの追加などによりさまざまな機能をカスタマイズ可能です。そのため、費用と時間をかけられるのであれば、自社に合った最高のシステムを構築できます。ただし、カスタマイズには時間とコストがかかるため、それなりに体力のある企業でなければ難しいでしょう。
一方、クラウド型PBXでは、オプション追加によって、オンライン上で簡単に機能をカスタマイズできます。ベンダーによって追加できる機能はさまざまで、場合によっては欲しい機能を追加できないこともあるでしょう。しかし、事前に自社で必要な機能を洗い出してベンダーを選定すれば問題はありません。また、オンプレミス型PBXと違って、時間や費用をかけずに回線数を柔軟に増減できます。
このように、どちらも機能を拡張できますが、手間がかからない点でクラウド型PBXの方が利便性が高いでしょう。
メンテナンス・保守の違い
オンプレミスPBX | クラウドPBX | |
---|---|---|
メンテナンス・保守 | 自社で行う | ベンダーが行う |
メンテナンス・保守についてはクラウド型PBXの方が簡単です。
オンプレミス型PBXはメンテナンスや保守を自社で行わなければなりません。専門知識を持つスタッフを採用・育成する、または専門業者に依頼して対応します。もちろん、PBX装置が故障すれば修理や新規購入が必要です。そのため、オンプレミス型PBXのメンテナンス・保守には膨大な費用がかかりますし、手間もかかってしまいます。
一方、クラウド型PBXは、メンテナンスや保守をベンダーが行います。費用は月額料金に含まれていますので追加料金はかかりません。
このようなことから、メンテナンス・保守については圧倒的にクラウド型PBXの方が簡単でリーズナブルであるといえるでしょう。
オンプレミス型・クラウド型 それぞれを選ぶべきケース
ここまでオンプレミス型とクラウド型の違いを比較してきましたが、実際に導入する場合はどちらのPBXが良いのでしょうか。以下で、それぞれが向いているケースをご紹介します。
オンプレミス型を選ぶべきケース
オンプレミス型PBXの導入が向いているのは、スタッフが外出やテレワークする機会が少なく、電話環境にコストをかけられる企業です。
オンプレミス型PBXが優れている点は、費用と時間さえあれば無限に拡張でき、セキュリティを強固にできることです。PBX機器は自社保有であり、業務に合わせて必要な機能を追加して自由にカスタマイズできます。セキュリティについても、従来型のPBXならばサイバー攻撃の心配はありません。IP-PBXであっても、費用をかけられるのであれば、より強固なものにすることが可能です。
ただし、従来型のPBXだとオフィス内でしか会社代表番号を利用できません。どんなに機能が高くても、外出先では利用できないのです。そのため、ほぼ外出せずにオフィス内で仕事をすることが多い企業に向いています。
クラウド型を選ぶべきケース
クラウド型PBXの導入が向いているのは、コスト削減や業務効率化を図りたい企業や、外出先などでも会社代表番号を利用したいと考えている企業です。
クラウド型PBXの魅力はなんといってもコストを抑えやすい点です。初期費用が安いだけでなく、外出しているスタッフや遠方の拠点と内線通話できるため、通話コストも抑えられます。
また、利用するサービスによってはさらなる通話コストの削減も可能です。例えば03plusの10分かけ放題のような通話料定額サービスを活用すれば、外線通話料も大幅に抑えることができるでしょう。
また、クラウド型PBXは便利なITツールと容易に連携できます。オンプレミス型も連携できますが、手間や費用がかかってしまいます。クラウド型PBXならば必要なときに必要な機能をオンラインですぐに追加でき、すぐに業務効率化を図ることが可能です。
さらに、テレワークが推進される昨今では、クラウドPBXは重宝するツールです。自宅で作業していても、オフィスにいるのと同じように電話対応できるためです。将来性も考えた場合、クラウド型PBXは今後も多くの企業が採用すると考えられます。
まとめ
今回は、オンプレミス型とクラウド型を比較しました。
オンプレミス型とクラウド型の大きな違い、それはPBX装置をオフィス内に設置するか、それともクラウド上に構築するかです。たったこれだけの違いですが、比較してみると費用や品質、利便性やセキュリティなど、さまざまな面で大きな違いがあることがお分かりいただけたのではないでしょうか。
オンプレミス型、クラウド型、それぞれにメリット・デメリットがありますので、自社にとってどちらが合うかをじっくり検討して導入していきましょう。
将来を見据えて、利便性の高いクラウド型PBXを導入したいということであれば、ぜひ03plusをご検討ください。