近年、従来のビジネスフォンからクラウドPBXに移行する企業が増えています。ただ移行にはいろいろな不安があるもので、中には「フリーダイヤルの番号は使えるのだろうか?」と疑問を感じている方もいるようです。
実は、クラウドPBXでもフリーダイヤル番号を新規取得・継続利用することが可能です。
今回は、フリーダイヤルをクラウドPBXで使う方法と、そのメリットやポイントを解説します。
目次
フリーダイヤルとは
フリーダイヤルというと、ほとんどの方が「0120」の番号を思い浮かべることでしょう。
実はフリーダイヤルという名称は、NTTコミュニケーションズにおける0120番号の名前で、商標登録もされている「商品名」なのです。本来の正式名称は「着信課金電話番号」といいます。
この着信課金電話番号は、電話をかける側ではなく、電話を受ける側がその通話料を負担するサービスです。つまり、0120宛にかけた顧客ではなく、電話を受けた企業側が料金を支払う仕組みとなっています。
ちなみに、前述の通りフリーダイヤルはNTTコミュニケーションズの名称です。そのため、0120番号はキャリアによってその呼び名が違います。以下にそれぞれの名称を記載しますので、参考にしてください。
・NTTコミュニケーションズでの名称:フリーダイヤル
・KDDIでの名称:フリーコール
・ソフトバングでの名称:フリーコールスーパー
・楽天コミュニケーションズでの名称:フリーボイス
大まかな点では似ている点はあるものの、作業手順やオプションなど、細かいところでは名称と同様にキャリアごとに違いがあります。
本記事において「0120」番号は、多くの方々にとってなじみの深い、NTTコミュニケーションズが提供するフリーダイヤルを前提にいたしますのでご了承ください。
ナビダイヤルとの違い
0120のフリーダイヤルとともに、認知度の高い番号に「0570」があります。これはNTTコミュニケーションズの電話サービスで、ナビダイヤルという名称です。
一見、両者は似ているサービスと思われがちですが、明確な違いがあります。フリーダイヤルは着信側が料金を支払いますが、ナビダイヤルは発信者側が料金を支払う仕組みです。例えば「この通話は○秒ごとに○円かかります」とガイダンスが流れるのであれば、それはナビダイヤルということになります。
ただ、似ている点もあります。フリーダイヤルは一部のIP電話や携帯電話からはかけられませんが、ナビダイヤルも同様にかけられないケースがあります。また、両者ともに名称はNTTコミュニケーションズの商標です。
企業がフリーダイヤルを持つメリット・デメリット
企業がフリーダイヤルを持つとどのようなことが想定されるでしょうか。以下ではメリット・デメリットを解説します。
【メリット】顧客の通話料負担がない
フリーダイヤルの大きなメリット、それは顧客側に通話料金の負担がなくかけやすいことです。
フリーダイヤルは発信側ではなく着信側に料金がかかることから、顧客は心理的に電話をかけやすくなります。そのため、問い合わせ窓口やコールセンターなど、顧客からの電話を積極的に受けたいと企業が思うケースでメリットがあるのです。
問い合わせのハードルを低くできれば、サービスの継続利用や新規顧客獲得なども見込めます。そのため、フリーダイヤルは企業で使われやすい番号です。
【メリット】移転などでも番号が変わらない
フリーダイヤルは移転しても番号が変わりません。
東京03などの市外局番つき電話番号は、住所に紐付けられているため、引っ越しや移転によってエリア外に出た場合は電話番号が変わります。番号が変われば、名刺やホームページへの記載を変更しなければなりませんし、お得意様にも周知しなければならないため手間がかかります。
しかし、フリーダイヤルは移転や引っ越しをした場合でも、番号をそのまま使い続けられます。これは、0120番号が複数のダイヤルイン番号と紐付けられているためです。番号が変わらないため、記載変更や顧客への周知の手間がなくなり、移転したとしてもそのまま窓口業務を継続できる点がメリットといえるでしょう。
【メリット】電話番号を覚えてもらいやすい
フリーダイヤルは他の電話番号と比べて、覚えてもらいやすい傾向にあります。
フリーダイヤルは0120と6桁の電話番号で構成されています。先頭は必ず0120であり、残りの6桁が分かれば電話をかけられます。固定電話番号は10桁のため、そちらと比べれば格段にフリーダイヤルの方が覚えやすいでしょう。
覚えやすいということは、用件があったときにすぐに顧客が電話をかけられるということです。それはつまり、問い合わせのハードルを低くすることにもつながります。前述の顧客側の通話料金負担がないことも合わせ、企業にとってフリーダイヤルはメリットのある番号といえるでしょう。
【デメリット】かけられる電話番号が制限されている
フリーダイヤルのデメリットは、かけられる電話番号に制限があることです。
固定電話番号であれば、フリーダイヤルを始めとしたさまざまな特殊番号にかけることができます。しかし、「050」から始まるIP電話の場合は、フリーダイヤルにかけられません。また、フリーダイヤルの設定次第では、携帯電話番号からもかけられない場合があります。
かけられる電話番号に制限があることは、問い合わせのハードルを高くしてしまうことであり、企業にとってはデメリットです。
【デメリット】通話料の負担が発生する
フリーダイヤルは着信を受ける企業側が通話料金を負担する仕組みです。そのため、コスト面でのデメリットがあります。
発信側である顧客にとって、通話料金がかからないことは大きなメリットです。もちろんそれは、問い合わせ件数を増やすことにつながりますから、企業にとってもメリットのあることといえるでしょう。しかしその一方で、企業は問い合わせを受けた分だけ、通話コストを負担しなければなりません。
もちろん、業績を高めるための必要経費と捉えられる範囲内であれば問題はないでしょう。しかし、電話をかけてくるのは顧客だけではなく、迷惑電話や間違い電話などの関係のない電話もあります。そうした迷惑電話であっても受けてしまえば通話コストがかかるのです。少しでもコストを抑えたいならば、プランの検討や迷惑電話対策などを行うことが大切です。
クラウドPBXでもフリーダイヤルが使える
フリーダイヤルは固定電話だけでなく、クラウドPBXでも利用できます。
クラウドPBXはアプリをインストールしたスマホ・PC・タブレットなどを用いて、いつでもどこでも通話を行えます。フリーダイヤルをクラウドPBXで利用すれば、オフィス以外の自由な場所でフリーダイヤル番号による発着信が可能です。
クラウドPBXならば、社内に営業マンが多いケースや、テレワークで受付業務を行いたいというケースでも電話受付業務を行えます。問い合わせ・受付業務は顧客の信頼を高め、サービスの継続や新規契約に結びつくものです。クラウドPBXでフリーダイヤルを使えれば、通常業務を行いつつ業務効率を高めることができるでしょう。
クラウドPBXとは?
クラウドPBXとは、主装置をクラウド上に設置してビジネスフォンの機能を利用できるようにするサービスです。従来のアナログ回線を用いたビジネスフォンと異なり、インターネット回線を用いるため、スマホなどで時間や場所を問わずにビジネスフォン機能を利用できます。
例えば、外出先の社員が会社代表番号にかかってきた電話を受けて、そのまま対応することも可能です。顧客からの電話を取り逃すことが減り、機会損失を防ぎやすくなるのが特徴です。また、外出中の社員や離れた拠点間の通話を内線扱いにできるため、社内コミュニケーションの活性化や通話コスト削減も果たせます。
クラウドPBXで取得できるフリーダイヤル
クラウドPBXで取得できるフリーダイヤルにはどのようなものがあるのでしょうか。以下では新規取得のケースと、既存のフリーダイヤルを継続するケースで解説します。
新規フリーダイヤルを取得
クラウドPBXでフリーダイヤルを新規に取得する場合、「0120」「0800」の2種類から取得可能です。取得のしやすさからいうと0800番号の方がおすすめです。というのも、0120番号は、0800番号と比べて発番されている番号数が少ないのです。また、0120番号は0800番号よりも古いものであり、番号そのものが枯渇しています。
使われなくなった中古の0120番号は取引されていますので、取得そのものは可能です。しかし、語呂が良いものや数字がきれいに並んでいる、キリの良い番号などは高値で取引されることが多く、取得は現実的ではありません。
そういった点を考えると、0800番号の方が認知度は低いものの、希望する番号を取得しやすいといえるでしょう。
現在使っているフリーダイヤルを継続
すでにフリーダイヤルを使用しているのであれば、クラウドPBXに移行した後もそのまま使い続けられます。
フリーダイヤルは、市外局番のように住所ではなく、使っている電話番号に紐付けられます。そのため、従来のビジネスフォンからクラウドPBXへ移行する際に代表電話番号が変わってしまったとしても、その番号に紐づけ直せば、フリーダイヤル番号を継続して使い続けられるのです。もちろん、クラウドPBX移行時に既存の市外局番も引き継ぐのであれば、改めて紐づけする必要はありません。
フリーダイヤルをクラウドPBXで利用するメリット
クラウドPBXは従来のビジネスフォンとは違い、インターネットを利用して通話を行うシステムです。そのため、クラウドPBXでフリーダイヤルを利用する場合、さまざまなメリットが生まれます。
フリーダイヤルへの着信をスマホで受けられる
クラウドPBXであれば、外出先でもスマホでフリーダイヤルの着信を受けられます。
従来のビジネスフォンでは、フリーダイヤルを受けられるのはオフィスに設置された固定電話のみでした。しかしクラウドPBXはインターネット回線を利用したシステムなので、アプリをインストールしたスマホさえあれば、外出先でもフリーダイヤル宛にかかってきた電話に出られるのです。
テレワーク環境を構築しやすい
クラウドPBXならば、フリーダイヤルを受けられるテレワーク環境を構築しやすいです。
クラウドPBXはスマホ・PC・タブレットなどにアプリをインストールすれば、いつでもどこでも通話を行えます。外出しているケースはもちろん、自宅でテレワークをする場合でも利用可能です。
スマホさえあれば、自宅で落ち着いた状態で顧客からの問い合わせを受けられるため、企業にとってはテレワークを推進しやすいことでしょう。
トータルの導入費用を抑えられる
クラウドPBXは導入費用を抑えられるのもメリットです。
従来のビジネスフォンの場合、主装置の購入・設置、配線工事、固定電話機の購入などで導入にはさまざまな費用がかかりました。しかしクラウドPBXは、そうした工事費用や購入費用がかかりません。
端末についても、すでに社用で使っているもの、または社員のスマホをそのまま利用できます。フリーダイヤルの問い合わせを受ける人員の増加とともに、固定電話機を購入する必要がなく、トータルで導入費用を抑えやすいでしょう。
フリーダイヤルが利用できるクラウドPBXを紹介
フリーダイヤルを利用できる、おすすめのクラウドPBXを3つご紹介します。
03plus
03plusは「東京03」をはじめとした、主要46局の市外局番つき電話番号を取得できるクラウドPBXです。番号ポータビリティにも対応しているため、既存の固定電話番号をそのまま継続して使うこともできます。もちろん、フリーダイヤルとの紐づけもできますので、窓口業務・受付業務などを行いたい企業でも便利に利用できるでしょう。
03plusの特徴は非常に多機能であることです。オプションの追加によって、WEB電話帳や自動音声応答、留守レポや受付アプリといった業務効率化に役立つ機能を利用できます。また、クラウドFAXは大阪市でも導入されているなど、企業や行政から信頼されているクラウドPBXです。
料金は初期費用5,000円、月額料金1,280円からです。
ナイセンクラウド
ナイセンクラウドは10年以上の運営実績があり、導入実績5000社以上と信頼されているクラウドPBXです。市外局番つき電話番号のプランと非対応のプランがあり、用途に応じて選べます。また、少規模から大規模利用まで幅広いニーズに対応しているため、自社の規模に応じて利用できるのも特徴です。自動録音や電話会議、履歴確認などの機能もあります。
料金は小規模ペアの場合、月額1万円からです。
OFFICE PHONE
OFFICE PHONEは比較的リーズナブルで、導入実績も多いクラウドPBXです。最短即日で開通するため、小規模利用のケースでも使いやすいことでしょう。通話録音やタブレット受付、クラウド勤怠管理といった業務効率に役立つ機能を利用できます。
料金は基本料金3400円からで、アカウント数に応じて変動します。
まとめ
今回は、フリーダイヤルについて解説しました。
フリーダイヤルは着信側が通話料を払うシステムであり、企業にとっては窓口業務の活性化などのメリットがあります。また、桁数が少なくて覚えやすいことから、顧客にとってもメリットがあります。
固定電話番号でなくても利用できることから、近年はクラウドPBXでフリーダイヤルを利用する企業も増えてきました。外出先でもフリーダイヤルの着信を受けられ、テレワーク環境も構築しやすいことがその理由です。
従来のビジネスフォン環境をお使いでしたら、ぜひクラウドPBXへ乗り換えを検討してみてください。