2020年の4月に新型コロナウイルスの蔓延に伴い日本でも緊急事態宣言が発令されました。密閉・密集・密接のいわゆる3密を避けることができ、職場クラスターの心配もないため、今注目の働き方といえるでしょう。
働く場所を選ばず、いつでもどこでも働けるその特性から地方創生施策として「ふるさとテレワーク」という働き方も注目されているのはご存じでしょうか。
この記事ではふるさとテレワークの基本知識とふるさとテレワークを導入するメリット、また企業側が従業員にふるさとテレワークを推奨するためにどのような準備をしたらよいのかご紹介します。
目次
ふるさとテレワークの基本知識
そもそもふるさとテレワークとはどのようなものなのでしょうか。
ふるさとテレワークとは?
ふるさとテレワークとはその名の通り自分の生まれ育った地や実家、また自然豊かな田舎でテレワークを行うことを指します。
子どもを自然豊かな場所でのびのびと育てたい、都会の喧騒を離れてのんびりと生活をしたい、年老いた両親のそばにいたいという従業員の希望を叶えられることから、導入する企業が少しずつ増えています。
総務省もふるさとテレワークへの補助事業を開始しており、都市部でなくても地方で都市部と変わらないように働ける環境作りや仕組みづくりを目指した積極的な推進がなされているのです。
ふるさとテレワークが推進される背景
ふるさとテレワークが推進される背景理由として大きいのが地方創生です。
第二次安倍内閣の重要課題の1つが地方創生です。以前から地方の若者が都市部へ流出してしまい、地方の労働人口が減少していることは問題視されていました。
令和元年6月21日閣議決定した「まち・ひと・しごと創生基本方針2019年」の中でも、「地方への新しい人の流れをつくる」「地方にしごとをつくり、安心して働けるようにする」の2点が目標として掲げられているのです。
総務省ではテレワークを通じて若者が都市部から地方へ流入してくることを目指しています。
東京商工会が2020年6月に東京商工会議所会員企業1,111社を対象に「テレワークの実施状況に関する緊急アンケート」を行いました。その結果、全体で約7割の企業がテレワークを実施しているという結果が出ています。
また、2017年に総務省が行った「平成29年通信利用動向調査」で地域別のテレワークの導入率を見てみると東京・神奈川・千葉の企業の導入率は20.8%なのに対し、東北では6.2%、北関東ではわずか2.1%ということが分かりました。
資本金が5億円以上の大企業では35.5%以上がテレワーク導入しているのにに対し、資本金が1,000万円未満の中小企業ではわずか6.2%しか導入が進んでいないこともその調査から分かります。
このようにテレワークは都市部の大企業ばかりに多く、このままでは柔軟な働き方が認められない地方では今後ますます若手の働き手が定着しないという問題が起きるでしょう。
そのことから、ふるさとテレワークを総務省が推奨しています。総務省が推奨しているふるさとテレワークには下記の4種類です。
- ふるさと採用
都市部の企業がテレワークで働く従業員を地方で新規採用する
- ふるさと起業
個人事業主や、地方で起業した人が地方の拠点でクラウドソーシングや業務委託等で都市部の仕事を請け負う
- ふるさと勤務
親の介護や、子どもの教育環境を理由に都市部から地方へ移住を希望する従業員が、地方で都市部の仕事を行う
- ふるさとオフィス
都市部の企業の従業員が、地方のサテライトオフィスに異動して本社機能の一部をサテライトオフィスでリモートで行う
ふるさとテレワークを導入するメリット
ふるさとテレワークを導入することは企業と従業員にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。
BCP対策になる
ふるさとテレワークのメリットの1つ目はBCP対策になるという点です。BCPとは事業継続計画のことで、非常時対応マニュアルの保守・運営業務全般のことを指します。
新型コロナウイルスの他にも日本では大雪や台風、大地震などで通勤が困難になることもあるでしょう。
そのような時にどのようにして被害を最小限に抑え、重要なビジネスを素早く再開し、損害を最小限に抑えるか事前に被害を想定して、その対応策を考えておくことが重要です。
BCP対策として拠点を複数置くことが推奨されており、ふるさとテレワークは理にかなっているといえるでしょう。
ワークライフバランスの向上につながる
2つ目のふるさとテレワークのメリットは、ワークライフバランスの向上につながるという点です。
例えば地方であれば土地の値段が都市部よりも安いため庭付きの戸建てを購入できたり、自分の実家の近くに住んだ場合には家族の協力を得ながら子育てをできたりということがあるでしょう。
また、休日は登山にキャンプにサーフィンに野菜作りなど、地方ならでわの趣味もできるかもしれません。
従業員のワークライフバランスが向上してモチベーションが上がり、生産性良く仕事を行うことができるでしょう。
ふるさとテレワークで地元の人と交流を行うことで、その地方ならではの新規のビジネスが創出されるきっかけになるかもしれません。
人材不足の解消につながる
3つ目のふるさとテレワークのメリットは、人材不足の解消につながるという点です。
今まで育児や介護でやむを得ず離職をせざるを得なかった人たちの勤務が可能になることで、優秀な人材の流出を防ぐことができます。
特に介護世代は40代・50代の管理職世代に多く、そのような人材の流出を防げるのは企業にとっても大きなメリットです。
また、都市部の企業がリモートワークで働く人材を地方で新規採用するふるさと採用であれば、ふるさとテレワークによって地域を問わず優秀な人材を採用できます。
企業のアピールポイントになる
4つ目のふるさとテレワークのメリットは、企業のアピールポイントとなるという点です。ふるさとテレワークのように柔軟な働き方ができるという点は、求職者にとって大きなメリットとなります。求職者が集まればその中からより優秀な人材を選ぶことができるでしょう。
ふるさとテレワークを実施する前に準備すること
ふるさとテレワークを実施する前に企業はどのようなことを準備すればよいのでしょうか。
コミュニケーション環境を整える
ふるさとテレワークを実施するために必要なことは、コミュニケーション環境を整えることです。テレワークではコミュニケーション不足から業務の効率が落ちると考えている人も少なくありません。
ふるさとテレワークのように各々が地方にいたとしても、都市部のオフィスで仕事をしているのと同じように頻繁に連絡を取り合うことのできる仕組みづくりが必要です。
例えばビジネスチャットやWeb会議ツールを導入したり、それらがスムーズに操作できるようなネット環境を整えたりといったことが企業に求められます。
また、従業員が孤独を感じないように定期的に面談やMTGを行い、従業員が心身共に健全に仕事をできているか確認する体制を整えましょう。
オンラインランチや飲み会をするなどして、ふるさとテレワークをしていても信頼関係が気づけるような仕組みづくりも大切です。
情報共有体制を整える
情報共有体制を整えることも、ふるさとテレワークを成功させるためのコツです。離れ離れに仕事をしているからこそ、リアルタイムで情報を適切に共有することは効率的に仕事をするために欠かせません。
例えばカスタマーサポート部門なら問い合わせ管理システム、営業ならCRMシステムなど、部署ごとに最適な情報共有システムを導入するのがおすすめです。
人事評価制度を見直す
ふるさとテレワークをするための準備として、人事評価制度も必ず見直しましょう。ふるさとテレワークでは評価する側の人が従業員の勤務態度が見えないため、通常勤務時のように業務態度で評価ができません。
そのため、業務の成果で評価をすることがふるさとテレワークでは多くなるでしょう。ただ成果だけで評価を行っていると、その成果をあげるために隠れ残業や、休日出勤をする人が出てくる可能性もあります。
そうならないためにも、ふるさとテレワークならではの人事評価項目を明確化するとよいでしょう。業務スピードやレスポンスの速さ、Web会議システムを用いて直接面談を行って成果までのプロセスを確認するのがおすすめです。
また、評価方法を統一することも重要といえるでしょう。評価をする人によって、何を見て評価をするかばらつきがあっては従業員のモチベーションもあがりません。
業務内容をふるさとテレワークにあった方法で正しく評価することで、従業員もモチベーションを保って仕事を行うことができるでしょう。
ふるさとテレワークで補助金は下りる?
総務省が行うふるさとテレワーク推進事業として、2020年3月までは東京一極集中を防ぎ、地方創生の一貫としてふるさとテレワークのための補助金がありました。
拠点の利用者として、都市部の仕事を地方で行う従業員や、介護や育児のために地方に転勤した従業員などがいれば申請が可能です。
上限3,000万円まで地方の拠点の環境を整えるための費用として国からの助成金を受けることができました。
現時点(令和3年1月)では、国が行うふるさとテレワークのためという名目の助成金はありません。
ただ、各地方自治体が独自に行っているテレワークを導入するための助成金を受けることが可能な場合もあります。
例えば栃木県であれば、リモートワークを推進するために地方への移転や分散をする目的で県内にオフィスを設置する企業に対して、最大で150万円の補助を受けられる「栃木県オフィス移転推進補助金」を整備しており、2021年3月まで募集をしています。
2021年1月に東京、埼玉、神奈川、千葉に再度緊急事態宣言が出されましたがこれを地方創生のチャンスと捉え、自治体が独自にテレワークに対する助成金を整備する可能性はあるでしょう。
ふるさとテレワークを導入したい場合には各地方自治体の助成金にもアンテナを張り、助成金を得ることで企業の負担が少なく、ふるさとテレワークを始めることができます。
ふるさとテレワークでの電話対応
ふるさとテレワークなど、従業員が遠隔地で勤務をする場合は社用スマホを利用する場合もあるでしょう。
ただ、社用携帯を用意するのもコストがかかり、なかなか導入が難しいという場合もあるかもしれません。
その際、従業員の私物のスマホやタブレットを利用することもあるかもしれませんが、仕事で利用したものなのかプライベートで利用したものなのか分からず、通話料金の清算が難しいという場合もあります。
そのような時に便利なのが、従業員のスマホやタブレットにダウンロードして、仕事用の電話として使用できる通話アプリです。
最後に、従業員自身のスマホでも企業の代表番号を発着信できる便利なアプリ「03plus」についてご紹介します。
「03plus」では東京の市外局番の「03」をはじめ、札幌や大阪、京都など全国46局番の固定電話の番号を取得し、スマホで利用することが可能です。
「03plus」には代表番号と直通番号(基本ID、追加ID)の2種類があり、直通番号はスマホ1台のみで使用できる番号のため、従業員直通の番号として利用できます。
代表番号であれば複数端末で発着信が可能です。企業の固定番号を代表番号にすることで、従業員がふるさとテレワークを行っていても複数人で対応をすることができるため、お客様を待たせる心配もありません。
パーク保留機能もあり、保留にしたときの番号がわかれば誰でも保留を解除して通話を再開することができるため、ふるさとテレワークの時でも会社にいるときと変わらない電話対応が可能です。
「03plus」を用いて発着信を行った通話料はアプリ内で確認できるため、清算も簡単に行えます。
通常通話料は30秒20円ですが、通話料が気になる場合は1IDあたり月額1,000円で10分以内かけ放題のオプションを付けることも可能です。
また、従業員自身のスマホに入っている電話帳とは別にクラウド上にWeb電話帳を作ることができます。ローカルにデータが保存されないため、退職の時や端末の紛失時に漏洩の心配もなく、安心して利用できるでしょう。
まとめ
新型コロナウイルスの影響で新しい働き方として急速に広がったふるさとテレワークは企業にとってもメリットがたくさんあります。
適切なICTを導入すれば働く場所は都市部にこだわる必要はなく、オフィスレスにすればオフィスの賃料も削減できます。
その分を従業員の福利厚生や、職場環境を整えるコストとして使うことができるでしょう。
ぜひ、ふるさとテレワークのような柔軟な働き方を検討する際の参考にしてみてください。