テレワーク導入に向けた就業規則の作成・見直しのポイントを解説

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これまでは、満員電車に乗って会社へ向かい、夜遅くまで残業していたというオフィスワーカーも多いことでしょう。

しかし、2019年4月より「働き方改革」が始動され、2020年にはコロナ禍もあり、日本のワークスタイルは大きく変わりつつあります。

特に、コロナ禍による最も大きな変化は、「テレワークの導入」ではないでしょうか。

企業の就業規則によっては、以前は介護や育児など特殊な環境にある人にのみに認められていたようです。

しかし、昨今では、社員にテレワークを積極的に推奨する企業も増えており、スムーズに移行するためには就業規則の変更も必要となってくるケースがあります。

そこで今回は、「テレワーク導入に向けた就業規則の作成や見直しのポイント」についてご紹介します。

 

 

テレワークとは

テレワークとは「勤労形態の一種」のことで、「情報通信技術」によって時間や場所などに制約を受けることなく柔軟に働くことを言います。

英語の綴りは「telework」で、「離れたところ」を意味する「tele」と「働く」を意味する「work」とが結合した造語です。

「離れたところで働くこと」と直訳されます。

同義語として、「テレコミューティング(telecommuting)」「在宅勤務」「モバイルワーク」「リモートワーク」「フレキシブルワークプレイス」などの用語も使われています。

テレワークにより「自宅で働く」ことには、いくつかのメリットがあります。

企業側は、オフィスの照明や空調、光熱費などのコストを軽減できます。

一方従業員側は、仕事と介護や育児などの家族のなかでの役割を両立できたり、通勤ラッシュや車の渋滞などによる通勤時のストレスを軽減できるというメリットがあります。

また、交通量を減らすことによって大気汚染が減ることになりますので、大きな視点で言うと環境という点でもメリットがあると言えるでしょう。

コロナ禍でテレワーク導入が広がっている

ここ数年、日本でもテレワークを導入する企業は増えています。

公益財団法人日本生産性本部が実施した、上場企業1,947社の人事労務担当者を対象とする「第16回日本的雇用・人事の変容に関する調査」によると、テレワークは、2001年には3.2パーセント足らずでしたが、2018年には37.3パーセントまで上昇しています。

また、2020年に実施した別の都の調査によると、今年はコロナ禍によってテレワークの導入を始めた企業は増加しているようです。

無作為に抽出して調査に回答した都内約400社の企業のうち、テレワークを導入した会社は2020年3月には24パーセントだったものが、4月には63パーセントまで上昇しています。

企業規模別で見てみると、2020年3月から4月にかけてのテレワーク導入率は、大企業は45パーセントから80パーセントに、中小企業は25パーセントから71パーセントに、小規模企業は19パーセントから54パーセントに、それぞれ大幅に上昇したとの結果が出ています。

テレワーク導入時に就業規則はどうなる?

新型コロナウイルスが一向に収束する兆しの見られない現状において、企業がテレワークを導入する場合、就業規則はどうなるのでしょうか。

就業規則とは、労働者の給与の規定や労働時間、休職・退職する際の条件などをまとめた書類のことです。

もし、雇用従業員が10名以上の企業の場合には、この就業規則を作成して従業員に通知すること及び労働基準監督署に提出することが原則とされています。

企業がテレワークを導入する際、テレワークで働く従業員の就業規則が、オフィスに出勤する従業員と全く同一であれば、わざわざ従来の就業規則を変える必要はありません。

しかし、導入時に何らかの新たな規定を設ける際は、これまで定めていた就業規則に規定を書き加える必要があります。

たとえば、通勤電車の利用が減った場合の交通費はどうすべきか、フレックスタイム制をどう扱えばよいかなど、オフィスに出勤して働く際とは異なる事情も出てくるでしょう。

特に、テレワークを導入していなかった企業がこのコロナ禍によって新たに導入を検討するとなった場合、入社した時の就業規則にはテレワークに関する内容が記載されていないため、労働条件を新たに明示し、企業と従業員の間での合意が必要です。

なお、未だ就業規則の作成や届出をしていない企業で従業員が10名未満の企業は、社員と労使協定を結んだり、労働条件通知書などの労働者への通知が求められますので注意しましょう。

就業規則は変更する必要がある?

先に述べたように、従業員が10名以上の企業で、これまでの就業規則にテレワークの記載がない場合は、就業規則の内容に変更を要する可能性が高くなります。

もし、働く場所が自宅になるだけで働き方が同じであれば、テレワーク導入時に就業規則を変更する必要はありません。

しかし、労働基準法に規定されている就業規則に記載すべき事項のなかで、テレワークの導入によって下記の3つのいずれかの項目を変更する場合には就業規則の変更が必要です。

1)始業や終業の時刻を変更する
2)休憩時間の長さを変更する
3)賃金の決定や計算方法を変更する

テレワークにおける就業規則のポイント

ここまでで、テレワークを導入する際には就業規則の変更を要する場合もあることがわかりました。

次に、テレワークに関する規則などを作成する場合、新たに就業規則に盛り込むべきポイントを説明しましょう。

企業が、テレワークに関する就業規則を追加する際に検討すべき事柄は下記の6つです。

1)労働時間
2)対象者
3)環境整備費用
4)人事評価
5)教育制度
6)セキュリティ

それぞれの事柄について、くわしく解説します。


労働時間の把握方法

1つ目の就業規則に盛り込むべきポイントは、時間外労働を含めた労働時間の把握の方法です。

労働基準法により労働者の労働時間は定められており、1日8時間、1週間で40時間が原則です。

また、使用者である企業には、労働者の始業・終業の時刻を確認し記録することが義務づけられていますので、就業規則にどう記載すべきかを検討しなければなりません。

オフィスに出勤する場合とテレワークとの大きな違いは「通勤時間の有無」です。

自宅で仕事をするようになれば、これまで通勤にかけていた時間がなくなるため、これまでと始業や終業の時刻が変わってくる可能性があります。

また、テレワークで作業する場合には、労働者が労働時間に何らかの理由で一度業務から離れて戻る、いわゆる「中抜け」をする時間が生ずる可能性が高いことも念頭に置いた方がよいでしょう。

もし、このような中抜けがあった場合には、企業は労働時間を確認する意味も含めて、労働者に「中抜け」の時間を休憩時間として報告させたり、労働者から要望があれば始業時間の繰り上げや就業時間の繰り下げを検討する必要があります。

このほか、テレワークで作業する労働者が夜間勤務や休日出勤を行う場合には事前に申請させるなど、時間外労働のケアすることも大切です。

このように、オフィスに出勤する場合と始業・終業の時刻を変更したり、時間外労働を制限する場合には、就業規則の変更を要することを覚えておきましょう。

対象者について

就業規則に盛り込むべき2つ目のポイントは、テレワークの対象者を明確にすることです。

導入の際、事前に対象者をきちんと定めておけば、後から混乱が生じたり、従業員間に不平等が生じたりすることもないでしょう。

2020年4月、コロナにより発動された緊急事態宣言のように、国からの要請の場合は全従業員がテレワークの対象となるかもしれません。

しかし、オフィスを無人に出来ない場合や、出勤した方が効率のよい仕事を担当する場合などもあり、テレワークを希望しない従業員、業務上不可能な人が出て来る可能性があります。

そこで、テレワークを導入する段階で適用対象者に対し一定の基準を定め、その後は経過を見ながら必要に応じて適用対象者の範囲を広げていきましょう。

また、テレワークの適用対象者に該当すると判断された従業員であっても、その従業員の所属する部署の上長がテレワークの適用基準を満たしていないと判断したときは、オフィスでの勤務を要請できるようにしておくことなども、就業規則に定めておくとよいでしょう。

環境整備のための費用について

就業規則に盛り込むべき3つ目のポイントとして、在宅勤務の環境を整えるための費用をどうするかの検討も大切です。

自宅で作業する場合には、情報通信機器や文具・備品・郵送・光熱費など、企業側と労働者側のどちらが負担すべきなのかが曖昧なものが出てきます。

また、労働条件や就業規則を設けることによって労働者が不利益となる場合には、条件や規則の変更は認められないこととされています。

そこで、自宅で安心してテレワークで作業ができるよう、使用者となる企業側がどの程度まで負担するのか、労働者側はどのように費用を請求すればよいのかなど、負担額の制限や請求方法等についても就業規則に定めておくとよいでしょう。

人事評価制度について

4つ目の就業規則に盛り込むべきポイントは、人事評価制度についてです。

テレワークになると上長が従業員の働いている様子を見られないことも、オフィスで働く場合との大きな違いです。

そのため、そのような従業員をどう評価するかについても、事前に就業規則によって定めておくとよいでしょう。

人事評価について就業規則に記載する際の観点は3つあります。

1つ目は、テレワークで作業する従業員に対しては、「人物評価」を「成果」に移行していくことです。

売上高や顧客を訪問した件数など、数値で判断できる営業などの営業職は「目標管理制度」によって判断できますが、数値で判断することが難しい総務や企画、開発などの部署で働く従業員の業務達成度は判断が難しくなります。

これらの業務の評価については、組織として社内で十分に検討する必要があるでしょう。

2つ目は、管理職が適切に人事評価を行えるような仕組みを作っておくことです。

たとえテレワークによって従業員が働いている様子を見ることができなくても、上長が従業員と定期的にコンタクトをとり、業務に関する目標の設定や成果報告についてしっかりと人事評価をできるスキルやノウハウを身につけられるようにしておくことが大切です。

そのためにも、企業が組織的に管理職の人事評価のスキルアップを目指していくと良いでしょう。

3つ目は、人事評価を行う際、テレワークで業務を行う従業員もオフィスに出勤する従業員と同等に評価できるようにしておくことです。

テレワークの従業員が不利益となることも、オフィスに出勤する従業員が不利益となることも、どちらもあってはならないことです。

企業はこの3つをしっかりと検討し、必要があれば通常勤務とは異なる制度を用いる旨を就業規則に明記しましょう。

事前に従業員にきちんと説明しておくなどの対策も講じることが大切です。

テレワーク環境下での教育について

就業規則に盛り込むべき5つ目のポイントは、教育や研修についてです。

自宅で働くということは、従業員は業務を通じて行う教育訓練「OJT(On the Job Training)」を受ける機会が減ることになります。

このため、これに代わる教育をどうするかについて検討しなければなりません。

実際に業務を行う従業員だけでなく、先にも述べたように上長が人事評価を行うための方法や、テレワークを実際に行う従業員の不満や苦情に対応できるようにする教育なども必要です。

また、対象者ではない従業員に対し、テレワークへの理解を深めるようなコミュニケーションの仕方についても考慮した方がよいかもしれません。

さらに、社内から情報を自宅に持ち込んで作業する場合には、電気通信や機器などに関する一連の操作方法やセキュリティ対策などに関する教育も必要となるでしょう。

特に、テレワークでの情報の取扱が、企業情報の機密漏洩や情報機器のウイルス感染などにつながった場合には、会社の信用を失い大きな損失を被ることになってしまいます。

このように、教育や研修についても就業規則に記載しておくべきです。

セキュリティ対策について

最後に、就業規則に盛り込むべき6つ目のポイントは、セキュリティ対策についてです。

自宅で業務を行う場合には、先にも述べたように、企業の機密情報を自宅に持ち込んで作業することもあるでしょう。

そのような場合を想定して、テレワークを導入する際には重要な情報は暗号化したり、ウイルスなどに感染することのない通信方法を選択したりすることなどが必要になります。

万が一のことが起きた場合に、何が原因でどこに責任がありどう対応すべきかなどもしっかりと決め、就業規則に定めておくと良いでしょう。

テレワーク中の電話業務は「03plus」で解決

このように、いざテレワークを導入するとなると、就業規則の内容を変更すべきか検討すべきことが色々とあります。

最後に、テレワークに関連する話題として、オフィスに居なくてはならないとされる電話業務のさまざまな課題は、03plusが解決してくれることをご紹介します。

この「03plus」は、スマートフォンを利用して、会社の固定電話にかかってきた電話やFAXを自宅で作業する従業員の全員が受信できるIP電話サービスです。

「03plus」のアプリを登録していると、複数の端末で内線番号で発着信ができます。

従業員の誰かが固定電話の番号から外部の会社に発信する場合も、複数の端末から同時に発着信ができるのです。

また、発信元の番号を確認できる「着信番号を表示させる機能」や、どの端末もログインしていない時に「不在着信を通知する機能」に加えて、「非通知の着信拒否」、「どの電話番号を発信元に使用するかの設定」などもできます。

「03plus」のサービスを導入する際は、特にこれまでの環境を変更する必要もなく、自宅で勤務する従業員もまるでオフィスで働いているかのように作業ができるため、とても便利です。


まとめ

今後もコロナ禍は続くことが予想され、テレワークを導入する企業は増えていく可能性があります。

もしテレワークの導入を考えているのであれば、就業規則に盛り込むべき6つのポイントについて十分吟味するとともに、さまざまな電話業務に関連する課題を一掃してくれる「03plus」の導入についても検討されることをお勧めします。

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