災害時・非常時のBCP対策としてテレワークを活用|効果や注意点

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自然災害やテロなど不測の事態が起こった場合でも、企業は事業を継続させなければなりません。

2020年の新型コロナウイルスの世界的な流行時でも、多くの企業は事業を継続させるためにさまざまな対策を講じました。

社員をオフィスに出社させず、テレワークで業務を継続させたのもそのひとつです。

そこで今回は、災害時や非常時のBCP対策としてのテレワークについてご紹介します。

会社のBCP対策を検討している人は、ぜひ参考にしてみてください。

 

 

BCP対策とは?

「BCP対策」という言葉をご存知ですか。

「BCP」は「Business Continuity Plan」の頭文字を取った言葉で「事業継続計画」を意味します。

企業が、自然災害・システム障害・不祥事・テロ攻撃などの緊急事態に置かれた場合でも、損害を最小限に止めて重要な業務を継続できるようにする対策のことです。

また、やむを得なく事業を中断した場合でも、早急に復旧するための対策も含まれます。

株式会社帝国データバンクは2020年6月に「事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査」を実施しました。

その結果、BCP対策をすでに行っている企業は全体の16.6%でした。

過去の調査結果と比較すると、BCP対策をしている企業は低水準ながらも増加傾向にあります

また、検討中・今後検討予定の企業を含めると、全体の50%以上がBCP対策に乗り出そうとしていることがわかったのです。これは、調査開始以降で最も高い水準です。

一方で、企業規模によってBCP対策に対する意識の差も顕在化しており、同調査によると、大企業でBCP対策をとっているのは30.8%、中小企業は13.6%でした。

業種別でも差があり、金融業界でBCP対策をとっている企業は42.1%と突出している結果です。金融は社会生活を継続する上で不可欠なサービスといった、社会的な責任からBCP対策をとっているという理由が考えられるでしょう。

 

日本では、企業ビジネスの継続脅威となるリスクが顕在化しています。例えば、令和元年に発生した東日本台風は、千葉県を中心に各地で大きな被害を齎しました。

また、新型コロナウイルスの拡大を受けて2020年4月に緊急事態宣言が発令されると、経済活動は大きく制限されました。

現在は企業規模や業種によって意識の差はありますが、BCP対策の重要性はこれまで以上に高まっていくと考えられるでしょう。

 

それでは、BCP対策の例を見てみましょう。

ある小売電気事業会社は、緊急事態宣言中に顧客の電話対応要員を十分に確保できなかった経験から、コールセンターの地方分散化を進めています。また、ある人材派遣会社は本社機能を東京から地方に移す計画を発表しています。

このように、事業継続のために物理的に離れた場所で業務を継続する体制を整えるのもBCP対策のひとつです。

さらに、災害時に重要なデータを消失しないように、クラウドの活用でBCP対策をとっている企業も増えてきています。

個人のパソコンや自社のサーバにデータを保存する場合は、パソコンや自社サーバが災害でダウンした際にデータも消失する可能性が高いです。一方で、クラウドサービスを導入していればデータセンターにデータを保存できます。データセンターを活用することで、地震だけでなく火災や停電にも強い構造となっているので、自社でサーバを保有するよりも安全です。

このように、BCP対策にはさまざまな方法があり、テレワークもそのひとつと捉えられます。

 

BCP対策としてのテレワークの効果

BCP対策としてテレワークを活用する企業が増えています。

場所に縛られない働き方により、災害時や感染症のパンデミックの際も事業継続が可能となるのです。

ここでは、BCP対策としてのテレワークについてご紹介します。

 

自然災害への対策

2011年に発生した東日本大震災は、多くの人が犠牲になるとともに国内の経済活動にも大打撃を与えました。

社員の安否確認や自社の設備・顧客の状況などを把握するのに時間も要しました。

また、壊れた設備などを復旧するのに、経済も時間もかかりました。

株式会社NTTデータ経営研究所の調査によると、東日本大震災は全国の約7割の企業に何らかの影響を及ぼしたと言われています。

また、2019年の東日本に上陸した台風も各地に被害を齎しました。

気象庁は人々に命を守る行動をとるように呼びかけ、生命に関わる危険が迫っていることを伝え続けました。

それに伴い、多くの鉄道会社で計画運休を実施するなど、交通機能がストップし混乱を招きました。

日本では時間降水量80mm以上の「猛烈な雨」や竜巻・突風が増えています。

このような中で社員がオフィスに出勤するのは、とても危険です。

テレワークを導入していたら、社員は自宅など安全な場所にいながら事業を継続させるための業務を行えます。

自然災害時に実際にテレワークを行った企業の例を見てみましょう。

あるIT企業は東日本大震災の発生後、翌週3日間は社員全員を在宅勤務にしました。

自宅でテレワークを行いながら、顧客対応の業務を継続できた実績があります。

 

昨今のコロナ禍でもテレワークは有効な対策に

株式会社NTTデータ経営研究所が2020年8月に実施した「企業の事業継続に係る意識調査」によると、BCP対策の対象として「ウイルスや病原菌等によるパンデミック」と回答する人が急増しました。

その理由を2つご紹介します。

 

1.感染防止対策として、3密を回避できる

テレワークを実施することで、通勤電車やオフィス内などで人と接する機会を減らすことができます。

3密を回避することで感染防止対策になり、社員を感染症から守りながら業務を継続できます。

2.感染しても元気な人は、仕事が継続できる

PCR検査で陽性反応があった人でも、一定の割合で無症状の人がいます。

このような場合、例え仕事ができるほど元気であっても、感染を広げないために自宅やホテルなどで待機しなければなりません。

テレワークを導入していたら、このような状況下でも隔離場所での仕事が可能です。

実際に、新型コロナウィルスのBCP対策として多くの企業がテレワークを導入しました。

東京都が行った「テレワーク導入率緊急調査結果」では、2020年3月と4月のテレワーク実施率を公表しています。

その結果、3月時点ではテレワークを導入している企業は24.0%でしたが、緊急事態宣言が発令された4月時点では62.7%と大幅に増加したことがわかりました。

また、みずほ情報総合研究所が実施した「新型コロナウイルス感染症流行を踏まえたBCPに関する調査」では、企業のBCP対策として効果があったものを公表しています。

上位にランクインしていたものは、以下でした。

  • 1位…オンライン会議システム
  • 2位…テレワーク
  • 3位…時差出勤

多くの企業がBCP対策としてのテレワークを評価していることがわかるでしょう。

地方自治体もBCP対策に取り組み始めました。

高知市は損害保険会社と連携して、テレワークとBCP対策を支援するセミナーを市内で開くことを決めています。

このように、多くの企業や自治体でBCP対策としてテレワークを導入する動きがあります。

 

BCP対策としてテレワークを活用する際の注意点

BCP対策としてテレワークは有効な手段ですが、活用するために注意も必要です。

形としてテレワークを導入しただけではBCP対策にはなりません。

テレワークの導入自体が目的ではなく、BCP対策が目的ということを忘れないようにしましょう。

そして、BCP対策を講じたい業務とテレワークでできる業務が一致しているかが重要です。

先にご紹介したみずほ情報総合研究所の調査によると、BCP対策をとっていたにも関わらず、コロナ禍においてBCPが「効果的に機能した」と回答した人は僅か16.7%でした。

一方で、BCPが機能しなかったと回答した人は全体の約30%弱です。

BCP対策が上手く機能しなかった理由として、想定していた事態と新型コロナウイルスが及ぼす影響が異なっていたためという意見が多く挙げられています

東日本大震災や東日本台風を契機に、自然災害に対するBCP対策を意識してきた企業は多くあります。

一方で、感染症によるパンデミックのBCP対策までとっていた企業は少ないのではないでしょうか。

先にご紹介したNTTデータ経営研究所の調査でもその実情がわかります。

2019年以前、直下型地震へのBCP対策をとっている企業は約7割でした。

一方で、ウイルスや病原菌などによるパンデミックに対するBCP対策をとっている企業は3割前後でした。

その理由として、地震や自然災害を想定していれば他のリスクにも幅広く対応できると考えていたという回答が目立ちました。

パンデミックに焦点を当てた対策の必要性を感じていなかったのでしょう。

世間のBCP対策への十分な理解が進んでいなかったことが、大きく影響したと考えられます。

非常時にBCP対策を講じたとしても、上手く機能しなければ意味がありません

まずは非常時に継続すべき中核事業を洗い出し、優先順位をつけるプロセスを踏むことが大切です。

そして、非常時に継続したい業務をテレワークで行うためには、どのような環境や仕組みを整えれば良いか考えていきましょう。

さらに、テレワーク導入後の評価も大切です。

テレワークがBCP対策として上手く回らないようなら、原因を特定して他の仕組みを考える必要があるかもしれません。

BCP対策としてテレワークを活用する場合、定期的に運用体制の見直しをしましょう。

また、テレワークは多様な人材の確保や生産性・業務効率の向上など、さまざまなメリットがあります。

テレワークの他のメリットを活かしながらBCP対策をすることで、より効果的なテレワークを実現することが可能です。

 

テレワークの運用を円滑にするツール

BCP対策の一環としてテレワークをご紹介してきましたが、テレワークをより円滑にするためのツールもたくさんあります。

ここでは、電話アプリ「03plus」を例に見てみましょう。

 

電話アプリ「03plus」なら出社しなくても電話できる

03plus」は、スマートフォンで利用できるIP電話サービスです。

緊急事態宣言下であっても、会社の代表電話に掛かってくる電話の対応をするために出社する、「電話番出社」が話題になりました。

電話番出社をする日は、特定の社員が電話対応に追われて他の業務が進まないなどの弊害もあります。

また、全社員がテレワークを実施する企業の中には、代表電話の対応として自動アナウンスを取り入れる会社も。

自動アナウンスでは、各社員の携帯やメールへの連絡を促す企業もあります。

しかし、社員の携帯電話番号やメールアドレスを知らない人は連絡をとることができません。

これでは、新規顧客獲得のチャンスを失い、会社として損失になる可能性もあります。

03plus」なら、固定電話番号の機能をスマートフォンでそのまま利用できるため、電話番出社をなくすことができます。

テレワーク中であっても会社の代表電話に掛かってきた電話に出られるため、手の空いている社員が電話対応できるでしょう。

オフィスに居る時と同様に他の社員に転送することも可能です。

このように、「03plus」はテレワークと組み合わせればBCP対策としても有効なツールになります。

 

まとめ

2020年10月に東京証券取引所でシステム障害が発生し、全銘柄の売買を停止する事態になりました。

これはシステム障害時に働くはずだったBCP機能が上手く動作しなかったことが原因とされています。

感染症や自然災害のリスクを中心にご紹介してきましたが、上記のようなシステム障害や悪意のある第3者によるインターネット攻撃など、ビジネスの脅威となるさまざまなリスクが潜んでいます。

起こり得るリスクを想定した上で、BCP対策を再度見直してみませんか。

その上で、テレワークを効果的に運用できる仕組みを考えてみてはいかがでしょうか。

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