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自治体では住民からの問い合わせが多く、各窓口では職員たちが日々その対応をしています。しかし、人力による対応は職員への負担が大きくなり、電話が集中するタイミングでは住民を待たせてしまいます。そこで近年、AI電話自動応答システムの導入を検討する自治体が増えてきているようです。
今回は、AI電話自動応答を自治体が利用するメリット、導入事例、導入時のポイントや注意点について解説します。
目次
AI電話自動応答とは
AI電話自動応答とは、AIが顧客の問い合わせ内容を理解し、人と話すように自動で対話を進められるサービスのことです。
AI電話自動応答では、AIが搭載されたボイスボットという音声対話システムにより、顧客の発話を理解します。自然言語処理技術により、顧客の言葉を自然言語として処理して理解するのです。また、IVR(自動音声応答)システムを活用し、機械音声によって人のように会話します。
AI電話自動応答は、電話の一次対応、予約受付、納期確認、支払いの催促など、さまざまなシーンで活用できます。また、24時間365日対応できるため、たとえ営業時間外であっても電話を取りこぼすことがありません。そのため、機会損失を防ぐこともできます。
AI電話自動応答を自治体が利用するメリット
自動で対話を行うAI電話自動応答は、以下のように自治体での利用でさまざまなメリットがあります。
コストの削減
AI電話自動応答は、コスト削減につながるツールです。
自治体にもよりますが、人件費に頭を悩ませているところは少なくありません。特に有人での電話対応業務は、受けるための人員はもちろん、適切な対応のための教育コストもかかります。教育したとしても、退職すればそのスキルやノウハウは消失し、新たな人材を育てるコストがかかります。また、自治体によっては、臨時職員や外部のコールセンターに業務委託しているケースもあります。コストを抑えられるものの、委託を中止すればスキルやノウハウは残りません。
しかし、AI電話自動応答を導入すれば、電話対応業務にかかっていた人件費や教育コストを削減できます。また、AI電話自動応答のシステムをブラッシュアップし続けることで、その経験や学びが資産として蓄積され、スキルやノウハウの消失がありません。そのため、AI電話自動応答は費用対効果の高いシステムといえるでしょう。
現場の負担軽減
AI電話自動応答を導入すれば、現場の負担を軽減できます。
自治体には毎日数多くの住民から問い合わせの電話がかかってきます。自治体の規模が大きくなればなるほどその数は多くなるため、職員の負担も多くなります。また、問い合わせ内容は、WebのFAQで簡単に解決できるものや、ただの雑談に過ぎないようなものも少なくありません。自治体職員は、電話対応のみが業務ではなく、本来片付けるべき業務があります。電話対応に追われれば、そのコア業務をこなせなくなるため、ストレスを感じてしまうこともあるでしょう。
AI電話自動応答を導入すれば、現場の負担は大きく軽減され、それに伴うさまざまな課題も解決できます。
繁忙期への対応
AI電話自動応答は、繁忙期にも柔軟に対応できます。
例えば、新たな感染症への対策としてワクチン接種がスタートした場合。このケースでは、問い合わせの電話が増加することが予測されます。そのため、電話対応のための職員を増員しなければなりません。しかし、臨時職員募集に人が集まらないこともありえますし、教育コストもかかります。その場合、外部業者への委託も考えなければならないでしょう。
AI電話自動応答は、こうしたケースでも柔軟に対応できます。予測される問い合わせ内容にあわせてシナリオを設定するだけで、膨大な数の問い合わせ電話にも対応できるためです。また、AI電話自動応答なら24時間いつでも対応できます。そのため、いつでも対応してもらえるという安心感を住民に与えられることでしょう。
住民の満足度や利便性の向上
AI電話自動応答の導入は、住民の満足度や利便性の向上にもつながります。
職員が電話対応する場合、担当者が通話中であれば住民を待たせなければいけません。問い合わせが多い時間帯などは待ち時間も長くなるため、「電話しても対応してくれない」と不満を持つ住民も出てくるかもしれません。
しかし、AI電話自動応答ならば、電話が集中したとしても住民を待たせることなく対応できます。あらかじめ設定しておいた簡単な問い合わせ対応であれば、AI電話自動応答でそのまま対応可能です。担当者に引き継ぐ複雑な内容であっても、AIで一次対応しているため、住民は待たされるという感覚が薄れます。さらに、24時間対応できるため、土日祝日でも住民はいつでも好きなタイミングで問い合わせ可能です。そのため、利便性の向上にもつながります。
対応内容の正確性と一貫性の担保
AI電話自動応答は、対応内容に一貫性があり正確であることも特徴です。
有人対応の場合、職員の知識やスキルによって対応内容が変化してしまう可能性があります。その結果、住民に誤解を与えてしまったり、間違った情報を伝えたりすることがあります。
しかし、AI電話自動応答ではそうした心配はほぼありません。AI電話自動応答では、自治体のデータベースにアクセスし、住民の問い合わせ内容に応じて検索して、正しい情報を選びます。そのため、誤った情報を伝えにくくなり、一貫した回答を行えるのです。正確性の高い情報を伝えてくれれば、住民は安心して問い合わせをしてくれますし、満足度も高めてくれることでしょう。
多言語対応
多言語に対応できる点もAI電話自動応答のメリットです。
自治体にはさまざまな住民からの問い合わせがあります。中には、日本語以外の言語を使う方からの問い合わせもあります。中には英語対応できる職員もいますが、近年の地方自治体は、英語以外の言語圏の住民を抱えていることが増えています。そのため、すべての対応ができるとは限りません。
AI電話自動応答では、さまざまな言語に対応可能です。日本語しか話せない職員ばかりであったとしても、AIが異なる言語圏の住民の問い合わせにしっかり対応してくれます。言葉の壁がなくなることは、多文化共生社会の実現にもつながるものです。
AI電話自動応答を自治体が活用している事例
AI電話自動応答を導入している自治体は数多くあります。ここでは、埼玉県川口市、神奈川県川崎市、愛知県春日井市の事例を紹介します。
埼玉県川口市の事例
埼玉県川口市では、コロナワクチン専用コールセンターにて、AI電話自動応答システムを導入しています。「接種できる時期」「接種を受ける手続きの方法」「予防方法」などのよくある問い合わせに対応するためです。
AI電話自動応答は24時間365日対応でき、住民からの問い合わせにいつでも応答できます。また、電話の一次対応や電話が集中した際のあふれ呼対応、よくある問い合わせ以外についてはオペレーターへ転送することで、オペレーターの負担軽減や住民の満足度・利便性向上に役立っています。
神奈川県川崎市の事例
神奈川県川崎市では、AI電話自動応答による問い合わせ支援サービスの実証実験を行っています。元々、「子育て支援」に関する問い合わせは自動化していましたが、住民からの要望もあり、行政サービス全般に対応する総合問い合わせ支援サービスとして再構築。さらに、住民のさまざまな意見を取り入れて、雑談性能の向上やデータの質・量の向上を図るなどのブラッシュアップを行いました。
その結果、住民に行ったアンケートでは、利便性が高まったとした住民が半数以上と高評価を得ています。より多くの問い合わせにAI対応できるようになったことで、各窓口の問い合わせ件数も削減できたとのことです。
愛知県春日井市の事例
愛知県春日井市では、未就学児の子育て支援の一つとして、AI電話自動応答システムを導入しています。例えば、「児童手当の申請」「誤飲対応」「育児相談」「保育園」「医療費助成」などの問い合わせにAI電話自動応答で対応しています。
未就学児の育児は24時間ずっと続くものです。夜間に何かあった場合に相談したくても、従来は次の日まで待たなければなりませんでした。しかし、AI電話自動応答ならば24時間対応であるため、いつでも子育てについて問い合わせできます。これは、小さな子を持つ住民にとって大きな安心感を与えるものです。
AI電話自動応答を自治体が導入する際のポイント・注意点
AI電話自動応答システムは数多くのメリットがあるシステムです。しかし、目的にあったものでなければ、導入してもうまく活用できません。ここでは、自治体がAI電話自動応答システムを導入する際のポイントや注意点を解説します。
導入後の運用が不可欠
AI電話自動応答は、導入後の運用がとても大切です。
AI電話自動応答は、住民からの問い合わせに対して自動で応答できるため、職員の負担軽減やコスト削減、住民の満足度向上につながるシステムです。しかし、AI電話自動応答システムを導入したからといって、そのまますぐに電話業務が改善されるかというと、そうではありません。AI電話自動応答を適切に使用するには、想定される住民からの問い合わせ内容に対する設定を行わなければいけません。その設定には時間がかかりますし、スキルやノウハウも求められます。また、導入後は、AIの精度や利便性を高めるために、ブラッシュアップも必要です。
こうした設定は職員だけでも行えますが、ノウハウがない状態では時間がかかりますし、担当者に負担がかかることでしょう。そのため、ベンダー側の担当者との連携が重要です。AIが電話自動応答システムを導入するならば、導入から運用までしっかりサポートしてくれるベンダーをぜひ選びましょう。
有人対応と連携できるとより便利
AI電話自動応答は、有人対応と連携できるものを選ぶと良いでしょう。
AI電話自動応答は、人の言葉を理解してその内容にあった適切な回答を行うシステムです。しかし、どのような問い合わせ内容にも対応できるわけではありません。AI電話自動応答で対応できるのは、定型的な内容やあらかじめ設定したシンプルな問い合わせのみです。そのため、複雑な内容についてはAI電話自動応答では対応できません。
AI電話自動応答は、有人対応とスムーズに切り替えられるシステムを選ぶべきです。よくある問い合わせについてはAI電話自動応答で対応。複雑な問い合わせや何らかのトラブルが発生した際は有人対応に切り替えるという棲み分けができれば、より柔軟な問い合わせ対応ができるようになります。
事例や資料を元に費用対効果を検討する
AI電話自動応答を導入するならば、費用対効果も検討しましょう。
AI電話自動応答は決してリーズナブルなシステムではありません。毎月数万から数十万円のランニングコスト、数十万円から百万円単位の初期費用がかかります。これは決して安くはありません。
自治体で使える予算には限りがあります。AI電話自動応答システムの導入・運用コストと削減可能なコストを天秤にかけ、費用対効果を検討しましょう。また、他の自治体の事例やベンダー側の資料にも目を通し、導入すべき価値があるかどうかを検討することをおすすめします。
自治体におすすめの03plusとは
コストを抑えつつ自治体の電話業務を効率化したいとお考えなら、03plusがおすすめです。
03plusは、全国の主要46局の市外局番付き電話番号を取得できるクラウドPBXです。番号ポータビリティにも対応していますので、乗り換え後も既存の固定電話番号をそのまま使い続けられます。
03plusは大阪市での導入事例があるサービスで、コスト削減や業務効率化を実現しています。大阪市では、FAX業務が職員の負担となっていました。FAXの送受信はもちろん、FAX用紙の補充も手間のかかる作業です。この課題に対し、03plusで提供している「クラウドFAX」を活用することで解決に乗り出しました。クラウドFAXはクラウド上でFAXの送受信を行える機能です。導入によりFAX用紙が不要になり、用紙の補充作業がなくなってペーパーレス化・コスト削減につながっています。さらに、FAXの送受信が簡便化されたことで、業務効率化を実現しました。
他にも03plusには、電話の一次対応を任せられる「IVR(自動音声応答)」や「留守レポ」、電話帳をクラウド上で一元管理・共有できる「WEB電話帳」、着信履歴をチャット共有できる「チャット連携機能」、1通話10分まで無料になる「10分かけ放題」などがあります。
電話業務を効率化したい、住民満足度を高めたい、コストを抑えたいといったご要望がありましたら、ぜひ03plusをご検討ください。
まとめ
今回は、AI電話自動応答の自治体における活用事例について解説しました。
AI電話自動応答は、あらかじめ設定した問い合わせ内容について自動応答できるシステムです。まるで人のように対話ができるため、機械音声とはいっても住民にとって受け入れやすいシステムです。また、一貫性・正確性のある回答、24時間対応できることで、住民に安心感を与えられるのが特徴です。本記事で紹介したポイントや注意点を参考に、導入を検討してみましょう。
また、電話業務全般を改善したいとお考えなら03plusがおすすめです。大阪市でも導入事例があり、業務効率アップやコスト削減を実現しています。