ISDN終了後の固定電話リスクと代替システム

NTTの固定電話網は2024年1月以降IP網へ移行しましたが、全ての固定電話がその時点で止まったわけではありません。一方で、INSネットのディジタル通信モードは2024年1月から地域ごとに段階的にサービス終了し、INSネット64/64・ライト/1500も2028年12月31日にサービス提供終了が予定されています。INSネット契約で電話やFAXを使っている場合は、サービス終了までにひかり電話等の代替へ移行する必要があります。

ISDN終了と聞くと、「会社の固定電話やFAXが使えなくなるのでは」と不安になるかもしれません。類似した情報に、2024年の固定電話網のIP化というものがあり、混乱することがあります。ただ、2024年の固定電話網のIP化と、ISDN、つまりNTTでINSネットとして提供されてきたデジタル通信サービスの終了は同じものではありません。ISDNは、電話回線で音声通話とデータ通信を扱えるサービスです。2024年の固定電話網IP網移行、2024年のINSネット ディジタル通信モード終了、2028年のINSネットサービス終了は、時期も影響範囲も分けて考える必要があります。

2024年1月のIP網移行時点で、INSネットの通話モードによる電話やG3 FAXが直ちに停止したわけではありません。一方、ディジタル通信モードを使うパソコン通信、専用端末通信、G4 FAXなどは、2024年1月から地域ごとに段階的にサービス終了しました。INSネット上のデータ通信には補完策も用意されていますが、従来のディジタル通信モードと同じ品質を前提にはできません。伝送遅延などが業務に影響する可能性があり、この補完策も2028年12月31日に終了予定です。

さらに、INSネット64、INSネット64・ライト、INSネット1500は、2028年12月31日にサービス提供終了が予定されています。つまり、2024年1月のIP網移行時点では電話やG3 FAXが即停止しなかったとしても、INSネット契約で使っている電話やFAXは、サービス終了までにひかり電話等の代替へ移す必要があります。

特に確認したいのは、電話機での通話だけではなく、回線の裏側で動いている通信です。EDI、POS、警備、決済端末、G4 FAX、受発注端末などが、古い接続方式を使い続けているケースがあります。固定電話番号が残っていても、主装置・PBX・TA・DSU・複合機・各種端末のどこかに旧来の構成が残っていると、移行や機器更新のタイミングで業務に影響が出るおそれがあります。

ISDN終了で固定電話がすぐ使えなくなるわけではない

ISDN終了への対応では、最初に「音声通話」「FAX」「データ通信」を分けて考えます。

NTTの固定電話網は2024年1月以降、IP網へ移行しました。ただし、一般的な固定電話の音声通話が、その日から一斉に使えなくなったわけではありません。このIP網移行は、加入電話などのメタル回線を使う固定電話も含め、利用者宅やオフィスからNTT局内設備までのアクセス区間は基本的に既存のメタル設備等を使い、NTT局内設備から先の中継網をIP網へ移すものです。会社の代表番号、部署直通番号、外線発着信などは、契約中の回線種別や電話設備の構成を確認したうえで判断します。

一方で、INSネットのディジタル通信モードは、2024年1月から地域ごとに段階的にサービス終了しました。影響を受けやすいのは、音声通話ではなく、パソコン通信、専用端末通信、G4 FAX、古いEDI、POS、決済端末、警備装置、受発注システムなどです。補完策が利用できる場合もありますが、従来のディジタル通信モードと同じ品質を前提にはできず、2028年12月31日に終了予定です。

また、INSネットそのものについても、2026年時点の公式案内で、INSネット64、INSネット64・ライト、INSネット1500が2028年12月31日にサービス提供終了予定とされています。新規申込や移転などの受付は2024年8月31日に終了しています。つまり、「2024年1月のIP網移行時点で電話やG3 FAXが即停止したわけではない」が、「INSネット契約の電話やFAXは2028年末のサービス終了後もそのまま継続できるわけではない」という整理になります。

「ISDN終了後も固定電話が使える」と一括りに考えると、誤解が生まれます。全ての固定電話が止まるわけではありませんが、INSネット契約で使っている電話・FAX・データ通信は、サービス終了までに代替へ移す必要があります。音声通話、FAX、データ通信、端末接続を分けて棚卸しし、通信会社、機器ベンダー、保守業者に現在の提供状況を確認することが欠かせません。

まず確認すべきは音声通話ではなく利用用途

固定電話を見直すとき、最初に確認すべきなのは回線番号そのものではなく、「その回線で何をしているか」です。

請求書に番号が載っていても、現場では電話機につながっていないことがあります。主装置やPBXの中に収容されていたり、TA、DSU、ルーター、モデム、アダプタを経由して別の端末につながっていたりするためです。長く使っているオフィスや店舗では、担当者の交代により用途が分からなくなった回線も出てきます。

確認対象には、代表電話、部署直通、FAX、警備、POS、決済端末、EDI、受発注端末、ビル設備、エレベーター、遠隔監視、G4 FAXなどがあります。請求書、回線契約、機器ラベル、配線盤、主装置の収容表、保守会社の資料を突き合わせ、回線ごとの用途を整理します。

音声通話だけの利用

代表電話、外線発着信、内線転送など、通常の電話業務だけに使っている回線であれば、ISDN終了という言葉だけで直ちに通話停止と考える必要はありません。2024年1月以降も、INSネットの通話モードは引き続き利用可能と案内されています。ただし、INSネット自体は2028年12月31日にサービス提供終了が予定されているため、INSネット契約で音声通話を使っている場合は、終了日までに代替回線へ移す前提で計画します。

既存のビジネスフォンを残すなら、主装置が現在の回線や今後使いたいIP電話サービスに対応しているかを確認します。対応ユニットの有無、設定変更の可否、保守期限、故障時の部品供給も判断材料になります。

データ通信を使っている利用

INSネットのディジタル通信モードを使ったデータ通信が残っている場合は、特に早めの確認が必要です。ディジタル通信モードは2024年1月から地域ごとに段階的にサービス終了しており、補完策も2028年12月31日に終了予定です。補完策は従来と同一品質ではないため、遅延や通信条件の違いが業務に影響する可能性があります。

EDI、POS、決済端末、警備装置、受発注システムなどは、電話機から見えない場所で通信していることがあります。音声通話が問題なく使えていても、データ通信だけが影響を受けるケースは考えられます。電話設備業者だけで判断せず、端末提供会社、警備会社、決済会社、取引先のEDI担当窓口にも確認します。

FAXやG4 FAXを使っている利用

FAXも、一律に使えなくなるわけではありません。G3 FAXは2024年1月以降も利用可能と案内されています。ただし、INSネット契約で使っている場合は、INSネットのサービス終了までに代替へ移す必要があります。

特にG4 FAXは、INSネットのディジタル通信モードと関連して使われてきたケースがあります。ディジタル通信モードの終了対象に含まれるため、G4 FAXを使っている場合は早めの見直しが必要です。受発注や請求業務でFAXを使っている場合は、機器が動くかどうかだけでなく、取引先との運用も含めて確認します。代替候補には、既存G3 FAXの継続、複合機設定の変更、クラウドFAX、メール送受信、Web受発注への移行などがあります。

影響が出やすい法人利用のパターン

影響が出やすいのは、長年同じ電話設備や業務端末を使い続けている法人です。

古い主装置やPBXを使っているオフィス、店舗ごとにPOS・決済・警備・FAXを個別契約しているチェーン、配線図や回線台帳が更新されていない拠点では、実際の接続状況を把握しづらくなります。主装置にBRI/INSユニットが入っている、TAやアナログ変換機器が接続されているといった構成も、早めに確認したいポイントです。

主装置・PBXまわりの互換性リスク

主装置やPBXは、電話機と外線の間にある設備です。利用者からは同じ電話機に見えても、外線側の収容方式が変わると、ユニット交換や設定変更が必要になることがあります。

既存電話機をそのまま使える場合もあります。ただし、主装置が古いと、回線変更に対応できない、保守部品がない、移転時に再構築できないといったリスクが残ります。電話機を残すのか、主装置ごと更新するのか、クラウドPBXへ移行するのかは、現在の機器構成と今後の働き方を合わせて判断します。

POS・決済・警備・EDIの業務停止リスク

POS、決済、警備、EDIは、止まったときの影響が大きい用途です。電話が使えていても、売上登録、カード決済、警備通報、受発注データ送信が止まれば、店舗運営や取引に直接影響します。

この領域では、電話設備業者だけで代替方式を決めないほうが安全です。POS会社、決済端末会社、警備会社、EDIサービス提供会社が指定する後継端末や通信方式を優先して確認します。インターネット回線、閉域網、LTE、固定IP、VPN、Web EDIなど、必要な条件はサービスごとに異なります。

FAX・複合機・G4 FAXの見落としリスク

FAXは現場に残りやすい通信手段です。請求、注文、納品、医療・介護・建設・製造などの業務では、取引先の都合によりFAXを残さざるを得ないこともあります。

確認するのは、FAX番号、複合機の機種、G3/G4の別、接続回線、送受信量、代替できる取引先の範囲です。G3 FAXを残すなら、回線や複合機の対応可否を確認します。INSネット契約で使っている場合は、2028年末のサービス終了までに代替へ移す計画が必要です。G4 FAXを使っている場合は、ディジタル通信モード終了の影響を受けるため、機器更新や運用変更を優先して検討します。

代替システムの選択肢

代替システムは、用途ごとに分けて選びます。音声通話、データ通信、FAX、警備・決済・POSを同じ方法で置き換えられるとは限りません。

音声通話の代替には、IP電話、ひかり電話系サービス、クラウドPBX、既存主装置の回線収容変更などがあります。INSネットや加入電話の代替としては、フレッツ光・ひかり電話、ひかり電話ネクスト、光回線電話、ワイヤレス固定電話などが案内されることがあります。データ通信では、インターネットVPN、閉域網、LTEやモバイル回線、各端末ベンダーの後継サービス、Web EDIなどが候補です。FAXについては、既存G3 FAXの継続、複合機の設定変更、クラウドFAX、メールやWeb受発注への移行を比較します。

警備、決済、POSは、提供会社が指定する方式を優先します。独自に回線だけを変えると、端末がサポート対象外になる可能性があるためです。

代表電話・内線を見直すならクラウドPBX

ISDN対策をきっかけに代表電話や内線の運用も見直すなら、クラウドPBXが候補になります。主装置を社内に置かず、インターネット回線を通じて外線発着信、内線、転送、着信ルールなどを利用する方式です。

スマートフォンを内線化したい、複数拠点の電話対応をまとめたい、リモートワークでも代表電話を受けたい、といった課題がある場合は検討しやすい選択肢です。03plusのように、市外局番付き電話番号、スマホでの発着信、IVR、クラウドFAX、通話録音、番号ポータビリティなどに対応するプランを用意しているサービスもあります。比較時は、必要な機能と既存番号の扱いを確認します。

ただし、すべての回線や端末を一度にクラウドPBXへ移す必要があるとは限りません。代表電話から先に移す、拠点ごとに切り替える、FAXや警備は別管理にするなど、段階的な移行も現実的です。

既存主装置を活かすなら回線収容と保守確認

既存の電話機や主装置を残す場合は、対応できる回線種別、収容ユニット、設定変更の可否を確認します。あわせて、保守期限、故障時の対応、部品調達、設定変更費、移転時の再利用可否も見ておきます。

「今使えている」ことと「今後も安定して使える」ことは別です。老朽化した主装置を延命すると、初期費用は抑えられるかもしれません。しかし、故障時の復旧や将来の拠点変更でリスクが残る場合があります。

データ通信は端末提供会社の後継方式を優先する

EDI、POS、警備、決済端末などは、端末提供会社やサービス提供会社の指定方式を確認するのが基本です。通信回線だけを置き換えても、端末側が対応していなければ動作しません。

確認項目は、通信品質、固定IPの要否、閉域接続の要否、セキュリティ条件、障害時の連絡先、運用責任の分界です。店舗や拠点が多い場合は、先行拠点でテストし、問題がないことを確認してから横展開すると安心です。

移行前に作るべき確認リスト

移行前には、回線と機器の台帳を作ります。台帳がないまま見積もりを取ると、不要な回線を残したり、必要な回線を止めたりするリスクがあります。

最低限、回線番号、契約名義、利用場所、接続機器、利用用途、担当部署、保守会社、代替予定、停止許容時間を一覧化します。電話設備業者、通信会社、複合機業者、警備会社、POS・決済ベンダー、取引先の確認先も整理しておくと、問い合わせが進めやすくなります。

回線と機器を棚卸しする

請求書に載っている番号と、現場の配線、主装置、TA、DSU、複合機、業務端末を突き合わせます。不明な回線があっても、用途が分からないまま解約判断をするのは避けます。

警備、エレベーター、遠隔監視、決済端末などは、普段の電話業務では存在に気づきにくいものです。夜間や休日だけ使われる通信もあるため、現場担当者や保守会社への確認を含めて進めます。

業務影響の大きい順に優先順位を付ける

優先順位は、電話の目立ちやすさではなく、止まったときの業務影響で決めます。代表電話も重要ですが、決済、警備、受発注、EDIの停止は売上や安全管理に直結することがあります。

移行時には、営業時間外のテスト、拠点単位の切り替え、切戻し手順、関係者への連絡方法を決めておきます。停止許容時間が短い業務では、事前検証と予備手段を厚めに用意します。

見積もり時に確認する項目

見積もりでは、初期費用や月額費用だけで判断しないようにします。機器費、工事費、番号継続の可否、FAX対応、停電時対応、保守範囲、解約費、移行スケジュール、設定変更費を横並びで確認します。

クラウドPBX、IP電話、既存主装置の更新、データ通信代替は、費用構造が異なります。電話の月額料金だけでなく、保守、故障対応、拠点追加、在宅勤務対応、将来の機器更新まで含めて比較すると判断しやすくなります。

クラウドPBXへ移行する場合の注意点

ISDN対策をきっかけにクラウドPBXへ移行する場合は、電話番号、FAX、ネットワーク品質、障害時運用を確認します。

最初に見るのは、現在使っている番号を継続できるかどうかです。番号ポータビリティの可否は、番号の取得元、契約状況、提供エリア、サービス仕様によって異なります。代表番号を移す場合は、着信ルール、営業時間外アナウンス、部署別転送、IVR、通話録音の要否も整理します。

スマートフォンやPCで電話を受ける運用に変えるなら、社内ルールも必要です。誰がどの番号を受けるのか、退職時にアカウントをどう管理するのか、通話履歴や録音を誰が確認できるのかを決めておきます。

なお、FAX、警備、決済、POS、EDIをクラウドPBXに載せるとは限りません。代表電話はクラウドPBXへ移し、FAXはクラウドFAXへ、警備や決済は各提供会社の後継方式へ移すなど、用途別に分けるほうが現実的な場合があります。

ISDN対策は「電話の入替」ではなく業務通信の見直し

ISDN終了後の対応は、単なる電話機の入替ではありません。会社や店舗で使っている業務通信を棚卸しし、用途ごとに影響を確認する作業です。

全ての固定電話がすぐ止まると決めつける必要はありません。2024年の固定電話網IP網移行は、中継網のIP化を中心とする移行であり、2024年のINSネット ディジタル通信モード終了や、2028年のINSネットサービス終了とは別に整理して考える必要があります。ただし、INSネット契約で使っている電話やFAXは、INSネットのサービス終了後もそのまま継続できるわけではありません。

また、INSネットのディジタル通信モードを使ったデータ通信、TA・DSU・主装置・PBX・G4 FAX・POS・警備・決済・EDIの周辺には、見落としやすいリスクがあります。補完策が利用できる場合でも、品質や終了時期を確認し、業務上必要な通信は後継方式へ移す前提で検討します。

メタル設備を利用した加入電話についても、将来的には光回線やモバイル回線を用いたサービスへ段階的に移行していく方針が示されています。すぐに一斉停止するという話ではありませんが、長期利用を前提にしている拠点では、電話設備の更新時期と合わせて確認しておくと判断しやすくなります。

進め方は、用途の棚卸し、影響範囲の特定、代替方式の選定という順番です。最終判断の前には、通信会社、機器ベンダー、保守業者、端末提供会社の最新情報を確認してください。サービス仕様や提供条件は変わることがあるため、自社の契約と機器構成に基づいて判断することが重要です。

よくある質問

ISDN終了後、会社の固定電話は使えなくなりますか

INSネット契約で電話を使っている場合は、2028年12月31日のサービス提供終了までに、ひかり電話等の代替へ移行する必要があります。

INSネットのディジタル通信モードとは何に使われていますか

EDI、POS、決済端末、警備、受発注、G4 FAXなどのデータ通信に使われている場合があります。ディジタル通信モードは2024年1月から地域ごとに段階的にサービス終了しているため、端末提供会社や通信会社への確認が必要です。

ISDN終了後、ビジネスフォンや主装置はそのまま使えますか

機種、収容している回線、ユニット、保守状況によります。電話機を残せる場合もありますが、INSネット回線を使っている場合は代替回線への対応可否を確認し、必要に応じて主装置更新やクラウドPBXへの移行も比較します。

FAXはISDN終了後も使えますか

G3 FAXは2024年1月以降も利用可能と案内されています。ただし、INSネット契約で使っているFAXは、2028年12月31日のサービス終了までに代替へ移す必要があります。G4 FAXはディジタル通信モードの影響を受けるため、特に早めの確認が必要です。

ISDN対策では最初に何をすればよいですか

回線と用途の棚卸しから始めます。代表電話、FAX、POS、決済、警備、EDI、主装置・PBX・TAの接続先を一覧化し、停止リスクが高いものから端末提供会社や通信会社へ確認してください。